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    soseki1_1

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    soseki1_1

    ☆quiet follow

    酔って帰ってきた大佐🤕がキス魔になり淫魔🔮を愛でる
    (傭占/♡喘ぎ)

    「イライ」
     揺蕩うような沈黙を終えたのは、ひとつの声だった。それは柔い声音で、いっとう大切そうに音を並べていた。沈黙を優しく破いたその声に、イライは素直に顔を擡げる。穏やかに虹彩へと色を広げる青い瞳に、随分優しい面持ちをした男が映る。
    「おいで」
     片方の手が広げられ、もう片方の手で自らの膝に触れる。その仕草が何を望んでいるか、わからない程に愚鈍ではない。それだから、イライは瞬間俯きかけて……畢竟目を逸らすこともできないまま大人しく腰を上げた。頬が熱く、それが皮膚という表皮の色素にも現れているだろうことは自覚していた。イライの皮膚は淫魔らしく夜向きで、熱に弱い。内側だろうと外側だろうと、与えられた熱に素直に呼応する。それを当然見て取ったナワーブは、浮かべた微笑みを深くしてイライを待った。その微笑みが、イライの羞恥を微かに煽り、その喜びを鼓動と共に沸き立たせた。
     一度立ち上がって、ナワーブの方へと身を屈めようとして……イライは悩んだ。どのように座ればいいか、解らなかったのだ。羞恥を混じらせながら当惑するイライを察したのだろうか。ナワーブはコップを机へ置くと、空かせた手を伸ばしてイライの膝へと触れる。寝具の柔らかな素材に包まれた関節を指先で覆い、撫でて、暗黙の内に自身の元へと呼ぶ。
     優しくも意図のある手付きに、イライは僅かに息を飲んだ。頬の白皙に赤みをいっそう混じらせながら、手に従うようにして片膝をナワーブへと向ける。片脚を折り曲げて、ソファに座るナワーブの脚の、すぐ隣へと膝を下ろす。少しと目線をやると、微笑んだままのナワーブの目と出会った。そして目線に応えるように、ナワーブの手が腰へと触れる。手は先ほどと同じように優しく撫でて……今度は促すかのように、掴む素振りをして引き寄せようとするものだから、イライは羞恥を味わう間も無く、慌ててもう片膝も同じようにナワーブの膝のすぐ隣へと下ろしたのだった。
    「いい子だ」
     腰を撫で続ける手に従って、イライはおずおずと、臀部をナワーブの膝へと下ろしきった。すっかりと座り込んだイライを見つめると、ナワーブは満足気にそう言って、両手をイライの顔へと差し向ける。掌で、指で、割れ物に触れるかのようにそうっと頬を包むと、そのままイライへと目を注ぐ。碧眼は焦点を微かに滲ませながら、けれど何処にも逸れることなく眼前を見つめ続ける。普段より幾許か明るい色味を帯びている様は、林の中の木々を映す湖に陽光が差し込んだかのような姿だ。晴天ではなく、雲を帯びて柔らかくなった光を受けた水面は、ちらちらと微かな光を輝かせている。イライはその瞳に見惚れていた。一心に注がれる眼差しは擽ったく、恥じらいを突く程の真摯さであったが、それに構うよりも胸に湧いた感嘆に身を委ねたいと思った。
    「……」
     息さえ僅かに薄くしながら、イライは自らの手を擡げ、ナワーブの手の甲へと添える。指先で触れたそれにこわごわと掌をも合わせていく。ナワーブの手が動くことはなく、よって、イライの手が払われることもない。鍛え抜かれ、筋張った手の甲を感じて、イライは薄く息を吐きながら睫毛を伏せて、青い瞳にヴェールのように掛け、俯くふりをしてその掌へと頬を寄せる。擦り寄るような……否、正しく擦り寄る仕草である。恥じらいと、もし拒絶されたらという恐ろしさのため、俯きによって紛らわせようとした仕草は、擦り寄る今となっては恥じらいを煽るものでしかなくなった。頬が熱くなるような、胸に冷たい風が吹くような感覚を憶えながら、イライはそうっと、瞼を擡げる。緩慢と擡げられた瞳には、碧眼が映る。先ほどと同じように自身を見つめ続ける瞳。そして先ほどよりも優しい色を滲ませた、熱い眼差し。注がれるそれが言外に……否、言葉以上に感情を物語っていて、イライは胸を、体を熱くさせた。もし拒絶されたら、嗤われたら、という、過去の実体験が思い起こした予想により冷えた心は、もう二度と寒さを感じることがないだろうと確信めいて予想が出来る。それ程の眼差しであった。
    「可愛い」
     随分と近くにある唇が開かれる。無駄のない、僅かな動きで言葉を紡ぐ。これはナワーブの口が常から行う癖のような動きだ。おそらく職務中、永遠とこのように言葉を紡いでいるのだろう様。イライと共にいる時には、それが少しだけ緩慢さを帯びる、優しさの姿。それが目に映ったものだから、聞こえた声はナワーブに違いないと、イライに理解できた。それだから、彼は脳がそれ以上の理解を行えなかった。
    「……えっ」
     短い言葉の連なりがイライの口から零れ出す。それは言葉になりはしなかったものの、喫驚を現す何よりの音と成っていた。唇は二の句を紡げなかったが、脳裏で渦巻く思考は既に言葉と成っていた。今、なんて?
    「可愛い」ナワーブがもう一度紡ぐ「可愛いな、イライ」
     その言葉と、自分の名が連なって紡がれたことに、イライは息を呑んだ。瞬きすら出来なかった。喫驚のあまり唇が薄く開いて、けれどもなんの音も紡げはしない。そんな呆けた顔のまま、イライは真白く染め上げられた頭で、必死に考えようとした。彼は今、なんと言ったのだろう。けれどそんなことは、考える間も無く明らかだ。聞こえた言葉は、声は、ひとつも違わず脳裏に留めてある。あり得ないことだが……例えイライが忘れていたとしても、その言葉はすぐに認識できるだろう。なにせ名前と称賛は、それから幾度も、幾度も紡がれたのだから。
    「可愛い、可愛い……」
     ひとつ、ひとつと、ナワーブは淀むことなく、走ることもなく音を紡いだ。まるで確かめるかのように……自身が紡いだその言葉が正しく正しいことを確かめ、満足に頷くかのように、ひとつ、ひとつと。注がれる眼差しは直ぐとイライを捉え続ける。柔らかな頬を包む手は、いつしか撫でる手へと変わっていた。
     認識し、鼓動し、顔にまで上り詰めた感情により赤みが差した頬の熱さを悟ったろうか。否、悟ったろう。でなければ頬を撫でる手が、こうも優しい訳がない。割れ物を触れるような指。強く摘むだけで傷跡がつき、元通りにはならない花弁に触れるかのような指先。それらはイライに羞恥を与え、動揺を与え、何よりの歓喜をも与えていた。
    「可愛いな、イライ……可愛い…可愛い」
     それが頬の赤さを揶揄するものなのか……何を指して告げているのか、イライは解らず当惑した。なにせ、ナワーブがこういった言葉を告げるのは、決まってベッドの中だけであった。なにせイライとナワーブは契約関係で、思いを寄せているのはイライだけだ……そうイライは信じ込んでいる……。ナワーブがイライに愛のような言葉を囁くのは、初心なイライを案ずる為である。淫魔であるというのに長い間、情交をしてこなかったイライが、ふたりで横たわるシーツの暖かさに、その白肌に触れる手の熱さに怯えないように褒めそやしているだけのことだ。イライの好意をナワーブは知っているし、イライ自身隠しもしていない。彼はその心をなぞり、行為に支障がないように優しさを与えているのだ。そのように、イライは納得していた。
     それだから今、ベッドの上でもない真夜中のリビングで、こうも熱っぽく愛じみた言葉を囁かれるのはどうしてだか、まるで理解が及ばなかった。
    「可愛い、可愛いよ。お前は可愛い…」
    「ん、…っ、ぅ……♡」
     幾度目かの囁きの後、柔らかな口付けを与えられる。皮膚の薄い男らしい唇、愛を囁くのに飽くことがないと言わんばかりのその口を、イライは拒むことができなかった。拒むことなど、どうして出来たろう? イライの動揺と当惑には嫌悪感がひと欠片とて含まれない。イライは愛を囁く前から、口付けを施す前から、その唇ごとナワーブを愛している。
    「……っ♡ん、む……♡ん、ん…ン……♡…っん、っ♡」
    「ん、ん……ん……」
     ナワーブは次々と口付けを与えていく。唇同士を触れ合わせるだけの柔いキスだ。しかし殆ど触れ合う距離で離れては再び重ね合わされるため、イライが静止を乞う余暇はなかった。そうする最中にも、頬を撫でていた手が動きを見せる。熱を帯びた柔い皮膚に触れていた手は、するりと米神へ、耳へと滑り、頭部へと回る。シャワーに入って久しいため、すっかりと乾いた栗色の髪を優しく撫でながら、頸へ、背中へと撫で降りていく。熱い掌の撫でる様、それから幾度も幾度も触れ合う唇は、先程まで与えていた愛情の言葉を体現するかのようで、イライはいっそう目の奥に、頭に、熱が篭っていくのを感じ取る。
    「可愛い、可愛いな……」

    …………
    ……
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    soseki1_1

    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
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    soseki1_1

    DOODLEナワーブ🤕と喧嘩して家出したイライ🔮を匿うノートン🧲/現パロ大占傭占
     火種って簡単に点くんだなって思った。鼻の先にある、灰色の間からちらちら覗く赤色は綺麗で、心臓みたいだなんて見たことのないものの想像をした。ただ咥えてるだけなのに口の中に煙が溜まるのが不思議だった。吐き出してばかりいたそれを思い切って吸い込んだとき、喉が焼けるような不快感に襲われて咳き込んだ。そこからはもうてんで駄目で、ただ口内に煙を溜めておくだけで僕は咳をするようになった。向いてない。明らかに分かる事実が悔しくて、認めたくなくて、僕は咳をしながら煙草をふかし続けた。
     ひたすら歩いて歩いて歩いた先にあった見慣れたコンビニでそれは買えた。ライターだって簡単に買えた。レジの隣に置いてあった。「煙草を」と言った僕に気怠げな店員は「何番ですかぁ」と草臥れた問いかけをして、僕は、淀み無く番号を言った。彼がたった一度だけ僕の前で言った煙草の銘柄を僕は馬鹿みたいに覚えていて、彼が言わなかった番号まで調べて覚えていた。言うつもりはなかったのに、その番号が口からついて出た。悔しかった。その番号以外知ってるものなんてなくて、店員はスムーズに立ち並んでる箱達からたったひとつを取り出していて、僕は撤回する機会を失った。
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