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    soseki1_1

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    soseki1_1

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    🤕を巡って微妙な空気の🧲と🔮と、それを見守る🧪(傭占)

    「……で、どうしちゃった訳」
     食堂を抜け出し、裏庭へと出る。庭師という役を与えられた少女が日々整える庭園は、月夜の中でも仄かに美しい。だからこそ不気味でもあった。
     月夜に照らされる草花に囲まれる で、ノートンはようやく足を止める。ついでイライの肩から手を離して振り返った。夜の暗がりに溶け入りそうな黒い瞳は、今や怪訝な視線を隠そうともしない。
    「さっきの試合で頭でも打った? …それとも、本当に疲れすぎてるんじゃない」
     ぶつけられる不可解に、イライは思わず僅かばかり視線を下げた。何かが可笑しい。その予想はおそらく間違っていない。けれど、何が可笑しいのかが解らない。疑念は有耶無耶のまま、明確な指摘に呑まれそうになる。わざわざ人気のない外に連れ出される程の失言などしたこともなく……そして今もした覚えがないために、イライは狼狽が隠せなかった。
    「そんなに、可笑しいことかな…」
    「……いつものアンタらしくないだろ」
     落ち込むイライを前に、なるだけ言葉を選んだのだろう。ノートンの歯切れは悪く、視線も僅かばかり刺々しさが薄れていく。そもそも怪訝よりは心配の方が勝っているに違いない。ノートンは優しくはないが、情が移りやすい男でもある。だからこそ解らない。彼の居所を訪ねるなど、これまでに何度かしてきたことだった。ノートンにだってそうだ。これまでは呆れた風に息を吐きながらも、おかずや酒などの対価と引き換えに教えてくれていたというのに。どうして今になって、"らしくない"と? 
    「……まあ、君たちの関係を知っている者は居る。私やキャンベルくんもそうだ」
     この場にもうひとり存在したのは、ふたりにとって幸いなことだった。重い沈黙がふたりの間を埋めようとしたとき。それを遮ったのは、伴って連れ立ったルキノの声であった。
    「…しかしな」
     ルキノは言葉を区切り、宙を食む。気まずさの味を舌の上で転がしながら言葉を選んでいるのだ。イライは目多いの下で眉尻を下げたまま、大人しく待った。ルキノは教授と名の付けられるほど、学問に通じる人だ。並外れた知性と伴う知識があり、感情に左右されず人に教えることにも慣れている。彼ならば、この不可解を紐解いてくれると信じていた。
    それだから、更なる不可解が降り掛かるなど想像もしていなかった。
    「試合の外でも、彼らを恐れてしまう子は少なくない。だからいつも、君から訪ねていたじゃないか」
     恐れる。訪ねる。身に覚えのない行為を、あたかも記憶のままだと言わんばかりに告げられる。イライは硬直した。今度は、頬や肩が強張ることも、息を呑むことも止められなかった。ただ、あまりの喫驚の為にそれらの音はあまりに小さく、気付いたのは真隣に立ち、片眉を僅かと顰めたノートンだけであったが。
    「そんな君がああも明け透けに口にするのは、珍しいなと思ってね。心配してるんだよ」
     イライは数秒、黙り込んだ。記憶と聞こえる話の全てが、あまりにも違いすぎている。胸の裏側が酷く五月蝿い。嫌な予感に満ち満ちた鼓動の為だ。皮膚を貫きかねないその音は体全体にまで伝わるようで、酷く不快だ。溢れる息は薄く、微かに震えている。名状し得ない不安が、輪郭を掴めないまま溢れ返る。何かが起きている。それだけが解る。何が? 何か、酷いことが。
    「……彼は、ナワーブはそうも…恐ろしい人だろうか」
    「当たり前だろ」
     どうにか取り繕って問い掛けを紡ぐ。そんなイライとは裏腹に、返答は直ぐに降り掛かる。
     言葉という明確な輪郭をもったその声を聴いたとき。それこそが胸騒ぎの正体であり、予感は的中したのだと、イライはよくよくと知ったのだった。
    「ナワーブ・サベダーはハンターなんだから」
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    PROGRESS大佐🤕と喧嘩して家出した🔮を匿う副官🧲2
    /現パロ大占傭占
    「ああ、いるよ」
     携帯電話から届く声が誰なのかは判別がつかない。ただキャンベルさんの口ぶりと目線で彼だと解った。彼は眇めたような流し目で僕を見た。
    「僕の家に居る」
     裏切られたと思った。立ち尽くした足が後ろにたたらを踏んで、この家から逃げようとする。だけど裏切られたという衝撃が体の動きを固くしていた。そのうちに、彼は言った。
    「なんで? あげないよ。送り届けてなんてやらない」
     踵を返して走り出そうとした足が止まる。息を止めたままキャンベルさんを見ると、彼はもう僕の方を見てはいなかった。ただ、唇を歪めて厭に微笑んでいた。
    「飽きたんだろ?貰ってあげるよ。常々美味しいんだって聞いてたし」
     怒鳴られてる。とは、漏れ出る音で解った。そういう空気の振動があった。それに構うことなく、キャンベルさんは鬱陶しそうに電話を耳から離すと、液晶に指を滑らせて電話を切った。四方形のそれをソファに投げて息を吐く。僕の、何とも言い難い視線に気付いたのだろう。彼はもう一度目線だけで僕を見た。それが問い掛けの代わりの視線だと解ったから、逃げ出すより前に口を開いた。
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    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
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