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    takanawa33

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    takanawa33

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    ショタミン囲う五の五七

     ああ、見つけた見つけた。今度こそちゃんと捕まえておくからね。大事に大事に仕舞ってあげる。隣からいなくならないように。

     五条悟が頭角を現し始めたのは齢五つの頃である。
     資産家として名高い家柄であったが、悟の勘は人一倍鋭く、時期になった株やら土地やら、金になるものはなんでも然るべき時に判断して売り捌き、歴代当主が守り抜いてきた財産を一代で二倍にも三倍にも増やすことに成功した。
     そして勘がいいのは金だけではない。人の縁にも敏感で、曰くこの子供には縁の糸が見えているのではないかと恐れられるほど五条家にとって都合のいい人間を引き寄せては取り入れ、逆に必要のない人間はこれでもかと切った。
     十歳になるころにはすでに悟の才覚に叶う者はおらず恐ろしいかな、その歳で形式ばかりの父に代わりほぼ当主として本家、分家にも名を轟かせたのである。
     そんな彼なのだから幸せに違いあるまいと家族も使用人も、彼を知る人間なら思うけれど悲しいかな悟は生まれてから一度たりとも満ち足りた思いをしたことはなかった。
     足りない。圧倒的に足りないのだ。
     優秀な人材に恵まれても、一生遊んでも釣りがくる財を持っても。悟の心はいつまでも埋まらない穴がぽっかりと開いていて、その空洞は常に彼を孤独にさせた。
     時々、夢を見るのだ。もう少し歳を重ねた自分がいて、その横に稲穂のような豊かな髪を揺らした青年がいる。悟が『ななみ』と呼べば彼は迷惑そうに、けれど邪見にしているわけではない瞳で『なんですか』とこちらに歩み寄ってくれるのだ。
     けれど夢の彼は忽然といなくなる。それが悲しくて、泣き叫びたいほど空虚な気持ちに晒される。
     金があれば満足できると思ったのにいつまでも空洞は埋まらない。人に恵まれればあるいはと社交界に飛び込んでみたりしたけれどむしろ空洞は大きくなるばかり。
    「このまま僕、死ぬのかなぁ」
    「まあ、滅多なことを」
     乳母は布団に転がる悟に眉を顰める。
    「悟坊ちゃまの仰る方、わたくし共でも探しておりますが……海外の方なのでしょう? 日本にお住まいですかね」
    「わっかんないよ、でも絶対見つける」
     その夜、悟はまた夢を見た。
     その日の夢には『ななみ』はおらず、悟は大きな自分と対峙していた。
    『……生まれたよ』
     なにが、なんて聞かなくてもわかる。
    『今度こそ、逃がすなよ』
     そう言って笑う。
     その夜から、悟が『ななみ』の夢を見ることはなかった。



    「いや、待たせたね」
     十五歳になった。その日、悟は居間にちょこんと座る子供と膝を突き合わせ喜びを隠しきれない様子で口を開いた。
    「いえ、あの」
    「うん、で、名前は?」
    「ななみ、けんと、です」
    「年齢は」
    「ごさい……です」
     甲高い声。記憶の中の『ななみ』とは大分違うが悟には分かった。
     これは、間違いなく『ななみ』だ。
     その七海はどこか怯えた様子で悟を見上げながら正座になれない足を動かさず様子を伺っている。白いソックスに畳の上にチョンと乗る細いふともも、膝の上に乗せられた小さな手は白く、そこに並んだ桜色の爪は砂糖菓子のようだった。
    「うん、七海は今日からここで暮らすからね。何か必要なものがあったら言って。地球外生命体とかじゃなければたいていのものは用意できるから」
    「……わたしは、ここで働くために呼ばれたんですか」
    「まさか、そんなことする必要ないよ。ただ僕の隣にいてくれればいいだけ。それだけだよ」
     多少強引な手段で連れてこられた七海は当たり前だがまだ落ち着かない様子で悟を見つめる。海色の瞳は記憶の中と同じ美しさだった。
    「まあ、こんなところで話してても面白くないし僕の部屋にいこう。今日から七海の部屋でもあるよ」
    「えと、あの」
    「あ、そうだ。僕の名前は五条悟ね」
    「ごじょう、さま?」
    「もっとフランクに」
    「……ごじょうさん?」
     桃色の唇が慣れない様子で名前を紡ぐ。けれど、幼いながらに悟を魅了する声音に目尻を細めながら頷いた「いいね」長く続く廊下に悟の落ち着いた声が微かに響いていた。
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