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    takanawa33

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    触手×飯②

     ああ、嬉しい! 嬉しい! こんなに嬉しいことはない。
     人間は好きだ。魔術師の研究のためのエネルギー源ということは分かっている。エネルギーを吸い出すためになんの感情もかけずにやることが効率的だとは分かっている。けれどそんな機械にも等しい僕に感情を持たせたのは魔術師で、僕はその感情のまま人間を『好き』だと思っている。
     僕は自分の親である魔術師のことはよく知らない。けれどよく言っていた。
    「私はバビディとはちがう、もっと大きな、純度の高い生命エネルギーを吸い出すことができるようおまえを生み出した。あんな下劣で頭の悪い魔術師とはちがう」
     確かバビディとかいう魔術師は人間の生命エネルギーをこれでもかと吸い出して殺してしまう方法をとっていたらしい。僕にとってはどうでもいいことだったけれど今なら分かる、ああ、パパ、僕に素晴らしい力を与えてくれて、どうもありがとう!



    「あのぉ、君、ここに住んでるの?」
     悟飯はうねうねと目の前で蠢く肉塊に問いかける。触手が一本、ヌルリと悟飯の前にやってきてプルプルと震える。これは、肯定なのかしら。分からないけれど意思があるのならば対話できるかもしれない。
    「僕は孫悟飯、虫の研究をしているんだ。君はこの洞窟の住民なのかな?」
     首を傾げる、代表して悟飯の前にいる触手がまたプルプルと震えるので悟飯は「そっかぁ」と頷いた。そして気付く、いつの間にか数本の触手がぬるぬると服の中に侵入していることに。けれど出会った時と同じ、まったく敵意も害意も感じない。悟飯は油断していた。完全にここは安全な場所だと、そう思っていた。そしてなにより、もしこの生き物が牙を剝いたとしても、自分は圧倒的に力が上で、この立場が逆転されることなんてありえないのだと心のどこかで思っていたのだ。
    「んと、でもここには虫はいなそうかな……お邪魔してごめんね、もしかしたらまた今度、僕じゃない人たちが君たちの洞窟を見に来るかもしれないんだけど、その時もよろしくね」
     腰に巻きつく数本を撫で、悟飯は身体を下がらせようとした。けれど巻き付く肉が「行かないで」と言わんばかりにグっと悟飯の身体を洞窟の奥まで連れて行こうとするので悟飯は笑った。
    「ごめんね、僕そろそろいかないと」
     足を動かそうとする。すると新たな太い触手がずるずると悟飯の防水ブーツに絡みついた。
     あ、ちょっとまずいかな。そのまま引きちぎるのは簡単だ。気を放って少し焼いてしまうのも手段の一つ。けれど、悟飯はどうにも自分より弱い相手を取り扱う方法が分からない。振りほどく時に怪我をさせたら、もし痛覚のある生き物だったら。僅かな戸惑いが、悟飯の判断を鈍らせた。瞬間。


     いかないで!


     意思疎通をしていた太い触手がヌプリと悟飯の口の中に入り込み、甘く、腐った果実のような香りの粘液をドロリと喉の奥に注ぎ込んだのだ。
    「……ッ!」
     吐き出そうにも触手は太く、しかも形を変えながら悟飯の口を覆う。反射的にゴクリと飲み込んだ時、悟飯は自分の判断が誤っていたことに気付く。
    (な、に、これ)
     ゾワゾワ、身体が熱くなる。ビリビリと指先まで痺れる。頭の中がくらくらする。
     少しの粘液でこれ、毒かもしれない。まずい、まずい、なのに身体は徐々に動かなくなって。
    「ビュルルルル」さらに吐き出される粘液は喉を通り過ぎてどろどろ胃の中に落とされていった。意識が朦朧とする。
     ふわふわとした思考の中、悟飯の身体がくったりと折れ、膝が肉の海の中に沈んだ時、触手は桃色の肉を悟飯へ何重にも巻きつけながら洞窟の奥へと引きずり込んでいった。
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