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    takanawa33

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    悠七 アイドルパロ

    『浮気の真相!? 人気既婚アイドル虎杖悠仁、妻をさしおいて深夜の銀座デート』
     くだらない週刊誌の見出しに七海はマスクの中でゆっくりため息を吐き出した。すでに自分は知っているのだ。アイドル虎杖悠仁が銀座で某グラビアアイドルと一緒にいたのは事務所の先輩に誘われた飲み会で突然彼女が現れたからだと。そしてこのタクシーに乗り込んだのは彼女一人だけで、その日悠仁はその『さしおかれた妻』の元に直帰しているしなんなら三回射精して翌日のゴミ収集車に虎杖悠仁の遺伝子入りスキンが出荷されたことも。
     だから七海はなんの焦りも失望もなかった。感情は動かず「またか」の一言だけ。
     パパラッチは今をときめくアイドルが実は既婚者だったこと(でもそれはデビューした時すでに言っている)が面白くて仕方ないらしい。そしてそんなアイドルが妻一筋の愛妻家で有名なことは面白くないらしい。
     実にばかばかしい。七海はそう思いながら勤務先の最寄り駅で降りる。磨かれた革靴がアスファルトの地面をカツカツと叩いていた。

     アイドル虎杖悠仁は高校のころからあげていたジュジュチューブ動画の人気に火が点き、事務所に勧誘されデビューしたイマドキアイドルだ。とはいえ、そんじょそこらのぽっと出とは違う。スクールにいったわけでもないのに歌に演技にトークに料理、運動もできるスーパーエンターテイナー。そんな彼のプロフィールの中で一番輝いているのが『既婚者』の三文字である。なんでも高校卒業と同時に結婚、相手は一般人、ひたすらに悠仁が迫り、泣き落とし、詰め寄り、ついに結婚してくれた相手とのこと。
    「それで、いつも指輪をつけてるんですね」
     朝の出演番組で笑いながら悠仁は左手をアップにするカメラに指輪を突き付けた。
    「そう、ほんと大変だったんだから絶対に浮気とかしねぇし、ていうかする人ってなんなん? 好きで結婚したんじゃねぇの?」
     まったくわからない、と眉を寄せる姿。桃色の髪にちょっと軽い口調。ヤンチャそうな見た目に反してこういう紳士な態度を見せるところに悠仁の人気はある。
    「今夜放送の『この一品がなくちゃ!』に出演します! よろしくお願いします!」
     終了間際に番宣をひとつ。手をふりながらカメラにウインクして放送は終了だ。出演者とスタッフに挨拶するルーティンを終えた悠仁にスーツの男性が近づく。
    「悠仁クン、おつかれさま、今日はこのあとドラマの撮影があるんだけど夕方までで終わりだから早く帰れるよ」
     マネージャーに言われ悠仁はパっと笑った。
    「マジ? じゃあ悪いんだけど帰りにスーパー寄っていい? ナナミンにお鍋にしよってメールしなきゃ」
     テレビには伏せられているけれどジュジュチューブ時代からのファンなら知っている『ナナミン』それが妻のお名前。マネージャーすら会ったことのない悠仁のど真ん中。名前だけなら何度も聞いているけれどいったいどんなお人なのかしらん。レギュラー番組3本、CM出演本数10本、この人気者の奥さんってどういうお気持ちなんだろう。嬉しそうにスマホをタップする所属アイドルを見つめながらマネージャーはドラマ撮影の現場に向かうのだった。

     そう、だから虎杖悠仁のそんなゴシップネタなんて今更。
     動画時代から『ヤリチン』『終身名誉プレイボーイ』『マジカルファッカー』だの好き放題言われてきた見た目の悠仁と結婚した時点で七海は「嫉妬」の感情なんて持ち合わせていないのだ。そもそも七海は愛だの恋だの性欲だのそういった浮ついた感情とは縁が遠いし、沸き上がることもない。もちろん悠仁に求められれば応じるけれど自分からセックスをする気になんてとうていならない。ならないのだ。そう、ならないよ。
    「あの~……七海サン?」
     出演番組『この一品がなくちゃ!』はゲスト芸能人がいつも食べているお手軽なごはんを紹介する番組。出演した悠仁はテレビの中でニコニコ笑いながら王手牛丼チェーン店に入っていく。
    『ここ! ここがないとね、やってけないよね。このメガ盛りに~、たまごつけて、それで七味もたくさんかける! 最近はお財布事情がいいので薬味もつけちゃうけど学生時代は紅ショウガだけだったなぁ』
    『え、普通に入っちゃうんですか』カメラマンの突っ込みにキョトンと目を丸くして『入るよ』と言うアイドルは見た目に反して美しい所作で箸を持ち、牛丼をかき込んでいく。
     きっと今ジュジュッターのトレンドは『牛丼』『メガ盛り』『じゅじゅ屋』で占められているにちがいない。だが、悠仁はテーブルにおいたスマホを取る余裕もなかった。
    「な、ナナミン……?」
     二人で鍋を食べている時には普通だと思ったのに、なにを思ったのか、悠仁の最愛にして唯一、ほぼストーカーまがいの粘着告白を受けて三年目にようやく結婚してくれた北欧系美人妻こと七海建人はソファに座る悠仁の膝の上に乗ってギュウギュウと手を繋いでくるのである。
     ムチムチの、筋肉質な尻が、それでいて悠仁が育ててむっちりと柔らかな尻が、悠仁の太腿にぴったりと当たる。風呂上りの、清潔なパジャマから漂う柔軟剤の香りと七海の愛用する石鹸のはちみつの香りが、ふわりと悠仁の鼻孔をダイレクトアタック。
    「えっと、これって、誘ってる、ってことデスカ?」
     その言葉に七海は上半身の力をくたりと抜き、悠仁の胸に後頭部を預ける。そしてわたわたとしている夫の手をギュウと掴んで一言。
    「わたし、おこってます」
    「おお???」
     さらにぐりぐりと頭を擦り付ける。ついでに難くなっていく悠仁のチンポを尻にぐりぐりと押しつぶすんだからたまらない。悠仁は思わず動こうとするたびに七海は手をギュっと握り、指の一本一本まで絡めて拘束する。
    「怒ってます。なんですかあの記事。私一筋なのになんで浮気とか書かれてるんですか」
    「ええ~……怒ってるの?」
    「腹が立ちます。悠仁くんは誰のものですか?」
    「七海建人さんのモノです」
     そういえばようやく七海は手を離し、悠仁から降りる。テレビの中の悠仁は牛丼をかきこみ『おかわりしようかな』なんてのんきなことを言いながらワイプの芸能人たちに引かれているが二人はそんな内容どうでもよかった。
    「エッチしますよ」
     そんな情熱的なお誘い、初めてである。本人が「はい」と言う前に、悠仁のそそり立つペニスがブルンと震えた。

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