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    takanawa33

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    takanawa33

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    破壊ネ申飯〜ポストアポカリプスを添えて〜

    そよそよと風が吹く。白く滑らかな肌を撫でていくそれが新緑の葉を額へひらりと落とすので、悟飯はようやく目を覚ました。
    初夏である。暑くもないが涼しいともいえない。風が体温を下げるのが心地よい。
    血のように赤く、しかしそれでいて穏やかな瞳を細め、身体を起こした姿勢のまま辺りを見回した。
    ああ、あの建物、崩れてしまったらしい。寝る前にみた景色とまた変わる世界。そう、確か寝る前はあの山のあたりに積石がぼろぼろになった集合住宅の名残があったはず。けれど今はもう灰色の瓦礫となってただ地面に伏してあるだけ。
    のびをする。肩の関節が小気味良い音を立てながら覚醒へと導く。
    あふ、と眠気を追い出すように最後のあくびをこぼしてからよいしょと立ち上がった。腹が減ったような気もするしそうでもないような気もする。神になってから時間の感覚もそうだが、五感も曖昧だ。莫大な時間の流れを耐えるには仕様のないことなのかもしれないが。
    ふわりと浮き上がり、すっかり緑に覆われた星を見下ろす。
    あそこにあった電波塔ももうない。あっちにあった学生寮は蔦で覆われ、どうなっているのかもわからない。仕方なしにいつもの場所にいけば、村の形跡すら消え、ただ林檎の木が茂った原っぱがあった。
    「君はいつもいてくれるねぇ」
    ちょっと失礼、林檎を五つほどポキリポキリともぎ取り、その木の陰に座る。すっかり人の手を介さなくなった林檎は原生に近く、甘さは薄れ酸味が強かった。しゃくり、しゃくり。皮ごと食べるソレに舌鼓を打ちながらなるほど、先任の神がやたらと食にこだわるのはこういうことかと納得する。知的生命体が育たなければ、こうして一人、素材をそのまま食すしかないのだ。とはいえ、悟飯は美食家ではないのであまり気にしないが。
    しゃく、しゃく。三つ目を食べているとヒョコリと膝に生き物が乗っかってくる。
    「こんにちは」
    ピスピスと鼻をならす生き物はウサギ……だと思われる。生態系が変わっていないのなら。
    悟飯は寄ってきたその子の頭を優しく撫で、食べかけの果実を差し出した。するとどこからきたのか、ピョコピョコと跳ねながらやってくる数羽の仲間たち。
    「ほしいの? 待ってね」
    膝に乗られては動けない。久々に気を練り、小さな小さな気円斬を指先に作り、放つ。たんぽぽのように小さなエネルギーは悟飯の意のままに空中を旋回し、頭上の赤い実をポトポトと彼らの上に落とした。
    「えへへ、また落としちゃった」
    手でキャッチするはずだった果実が数個、草の上に転がる。
    「一緒に食べよ?」
    しゃく、しゃく。咀嚼する。そよそよと吹く風は小さな白い毛並みと太陽に煌めく銀の髪を撫でていく。
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