回廊の外はいつも雨【サンプル】1
エントランスポーチの傍らの植え込みでは、オルレアが可憐な花を咲かせていた。
「どうぞ」
大きな大きなドアを開けて中に入ると、広い広いエントランスホールがあった。見るからに上等な分厚い絨毯が敷いてあり、床に飾ってある天使のオブジェがひどく小さく見えるほど天井が高い。三階分ほどをぶち抜いてあるように見えた。
ここは、西の国と中央の国の国境近くにある、貴族の屋敷である。
「まずはラウンジに案内いたします。こちらへ」
頷いて着いていくと、依頼人は不安そうにこちらを伺いながら次の扉を開ける。
「ああ……」
いくつもある大きな出窓からは太陽のひかりが差し込んでいる。明るい応接室に入って、まず最初に目に入ったのは巨大なソファの背だった。ゆったりした二人がけのソファだが、座面が俺の肩くらいまであり、背もたれのてっぺんには手を伸ばして届くかすら怪しい。その向こうには俺の顔の高さよりやや高い〝ローテーブル〟があった。部屋の中は万事その調子で、サイドテーブルも、クッションも、キャビネットも、全てが異様に大きい。それらが収まっているラウンジ自体もかなり広かった。
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