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    のたり

    守備範囲の広いオタク。字書き。

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    のたり

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    ビアフロ最新話。ここまでは書けてるんだが、あれ。後半のとこいい感じでないのでどうしたもんかとなっている

    元締最新話 時間は、少々遡る。
    フロラが奴隷商の青年を燭台で殴り倒した頃。同行していた二人の部下……エルナンとルシアノは、引き渡された三人を馬車に乗せた後。『助けに来ました』とだけ伝え、事情の説明もそこそこに砦跡から立ち去ろうとしていた。
     事前にやった打ち合わせで、任された仕事は二つ。
    『一足先に脱出し、保護した三人と共に合流場所へ無事に到着しておく事』
    『その途中で通過する川堀の水門を開ける事』
    他にも三人の世話や状況の説明など細かい仕事を割り振られてはいるが。それは合流場所に到着後にやる仕事なので問題はない。
     これからの予定をざっと確認した後。ルシアノは御者台側の小窓を開け、手綱を握るエルナンに声を掛けた。
    「フェルナン」
    用心の為に呼び方を少し変えて首尾はどうですかと続ければ。慣れた様子で鞭を振るいながら『今の所は上々』と返ってくる。
    「もう少しで水門に到着できると思う。そっちは?」
    保護した三人を任せる事で御者役に集中できてはいるが……本当に大丈夫かと言いたげなエルナンへ、問題ありませんよと笑ってから話を続ける。

    「あんな場所に閉じ込められていたからでしょうね、良く眠っています。この様子だと到着まで寝てると思いますよ」
    「それなら良いんだ。水門を開けたら屋敷まで一気に走らせるつもりでいたから、そっちの方が……」
    ルシアノの返答に大丈夫なら良いんだと頷いた後、急に言葉を切って黙り込んだ。
    「……フェルナン?」
     前方を見詰め、考え込んでいる様子のエルナンに何かあったのかと問うてみれば。
    御者台の同僚は心底困ったような口ぶりで『ルシオ。やべぇ、詰んだかも』と呟いた。

    第七話 令嬢と魔法使い

     砂利が転がっている岸辺に座り込んで、ここ最近で一番酷い目に遭ったと溜め息を吐きながらフロラは水中眼鏡を外した。
    「あー、死ぬかと思った……」
     水中に沈んだ直後。川堀に飛び込む計画を立てた事を後悔しながら、川底を蹴って水面へと浮き上がる。顔を出して、他に危険が無いか息継ぎがてら辺りをざっと見回しておく。

     水門付近が爆発したにしては水量や荒れ方が酷くない事から、見掛け重視の爆発らしいと判断して。合流までの動きを少々変更する。
    (浮きを仕込んでおいて正解だった)
     準備段階で空気を入れた革袋を浮きの代わりにするよう、服の中に幾つか入れてはいたが。まさかそれが役立つ事になるなんて……と複雑な気持ちになりながら。浮いたままの体勢で頭が水面に出ているようにしつつ、堀の水が注ぎこんでいる河川の方向へ流されていったのであった。
     そして砦跡から離れた場所にある森沿いの川辺……こと、現在フロラが休憩している辺りまで運ばれてしまったという訳で。
    「…………疲れた」
     最近こういうのばっかりだとボヤきながら。座ったまま手足を軽く動かして怪我や異変が無いかの確認をしていく。それを終えてから、先程目にした水門付近の光景を思い出して考え込む。
    (さっきのアレ、奴だったよな)
     水門近くに立っていた人影が本当に奴だったとして。あの爆発は何か、そもそも何故あそこに居たのか。……疑問はいくつもあるが、この場であれこれと思案するような事ではないなと考えるのをやめた後。休憩を切り上げ、部下達との合流場所に向かおうとした瞬間。誰かにじっと見られているような視線を感じ、フロラは反射的に身構えた。

    (……ふむ)
     どこから向けられた視線なのか、その相手が潜んでいる場所はどの辺りか。気付いているのを覚られないよう注意しつつ、それとなく周囲に目を走らせる。
    (多分……あそこだな)
    目前の林。何者かが潜んでいる場所に大まかな見当を付けて、少しの間考え込んだ後。近くにあった小石を二つ、手の中へ握り込んでおく。
     予想した位置に監視者が居るとするならば。小石を握る手元が木立の影やスカートで隠れている為、おそらくは見えていないはず……そう結論づけてから、立ち上がると同時に予想した位置目掛け握っていた小石を投げつけた。
    木々の間に小石が消えた直後、何か硬い物に当たったような鈍い音が辺りに響き渡る。
     少しの間。石を投げつけた方を見詰め、様子を窺っていたが。
    先程の音以外の反応は無く、何も起きていない事から『外したな』と判断して。嫌そうにしているのを隠しもせず、フロラは木立に向かって声を上げる。
    「さっきはよくもやってくれたな。デカラビア」
     その声に応じるように、木立の向こうからデカラビアが姿を現した。
    いくらかは投げやりな気分で、適当に呼び掛けていたのだが……本当に出て来るとは。その動揺を覚られないよう取り繕いながら、目前に出て来た男をじっと見据える。

     先程の音は手にしている杖で投石を撥ね退けたものだろうと推測しつつ、おかげで死にかけたと続ければ。
    「……助けられた礼にしては随分と物騒だな」
    心底愉快そうな笑みを浮かべながら。わざとらしく応じてくるデカラビアに対し、本当に嫌な奴だな……そう思っている事が明らかな面持ちで、フロラは口を開く。
    「助けられた? あれが?」
     水門を開けて、水量を調整するだけで良いという状況で《水門付近ごと爆発物で吹き飛ばす》という手段を用いた事実からして。少なからず殺意はあったのだろう。
    「仕留め損ねたの間違いじゃないのか」
    溺死していてもおかしくはなかったと苦々しげに続ければ、デカラビアからは心外そうな様子で『いいや』と否定してくる。
    「おまえを殺すとしたら別の方法が適切だろうよ」
    あの方法は使わん。確実性が無さすぎると続けたのを聞いて、じゃあ何をしに来たんだとフロラは問う。
     奴隷や人身売買に興味が無さそうな男が何故ここに居るのか?
    別行動中の部下達の身に何かあったのではなかろうかと疑いながら、返答によっては実力行使も致し方ないと身構えるフロラを見て愉快そうに目を細めた後。睨むような視線を気にした様子もなく『少し手を貸してやったまでの事だ』と言い切った。

    「そうか」
     短く応じたフロラに、急ぎの用でもあったらしいとわざとらしく付け加えた後。
    訊きたい事はこれだけかと言いたげに首を傾げているデカラビアに向かって『いいや、あと一つある』そう声を掛ける。
    「お前に水門の事を頼んだ奴は……無事なんだな?」
    態度や口ぶりからして、別行動中の部下達が無事だとは思えるのだが。それでもまだ安心できないと言外に漂わせているフロラの様子に、面白い物を見ているような表情のまま『安心しろ』とデカラビアが言う。
    「水門以外には何もしていない」
    どうこう出来る程の暇は無かったものでなと付け加えたのを聞いて、やっぱり石を投げておいた方が良かったのではなかろうかと後悔しながら眉をひそめたフロラは『はぁ…』と溜息を吐き出した後。身構えるのをやめ、手に持っていた小石を己の背後……川の方へと放り投げる。
    「やけに素直じゃないか」
     まさか信じるとは。そう言いたげに呟いたデカラビアに、聞こえているぞと釘を刺す。
    「お前が言うように時間が無いと思っただけだ」

    部下と別れ、堀に飛び込むまでの間に荒事慣れした男二人を含む数人を始末してから水門まで移動し爆薬を仕掛け、折を見て爆破させるというのは無理しかない。
     別行動中の二人がこいつと出会ったときに取る行動は……。考えながらフロラは言う。
    「ルシオか」
    おそらくは、何か情報を渡すからなどと言って交渉でもしたのだろう。内心でそう見当を付けながら『部下が世話になった』と続ければ。
    今、この女は何を言った? そう言いたげに目を見開くのを見て、失礼な奴だなと少々不貞腐れながらフロラは言う。
    「私が謝らんと思ったのか」
    部下が世話になったんだ。礼ぐらいは言うさと付け加えたフロラの向かいで、少しだけ黙り込んだ後。殊勝じゃないかと呟くデカラビアへ、好きに言っていろと返す。
    「今すぐにでもこの借りを返したいが……これから野暮用を片付にゃならん」
    次に会う時にでも礼をすると口にしながら、街道に出る為にデカラビアの隣をすり抜けようとしたのだが
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