鬼の首に鈴を付ける「隠神刑部様は本日商人との会談が立て込んでいて、とてもお忙しいんです。一昨日来てください」
勝手知ったる何とやら、いつもならばすぐに通して貰えるはずの屋敷で、朱の盆をそう門前払いしたのは今まで見たことがない青年だった。
にこりと涼やかな笑みを浮かべてはいるものの、その佇まいに隙はなくかなり腕が立ちそうだ。慇懃無礼も度が過ぎると角が立つ、と言うのを体現した言葉は、半分ほど頭の中をすり抜けてしまったものの、断固拒絶の滲む気配に本能的に喧嘩を売られていると理解して、反射で眉間に皺が寄る。
「てめぇ、見ない顔だな……話になんねえ、他の奴出せ。猫又とかいんだろうが」
「失礼、申し遅れました。俺は鉄鼠。先日から隠神刑部様の補佐をさせていただいてます。因みに猫又も会談に同席してますから、いませんよ」
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