ハロウィンナイト in リュンヌ「――伝達事項は以上です。他に確認しておきたいことはありますか?」
そう言って白い翼の天使が微笑むと、黒い翼の悪魔は生真面目な表情で彼を見上げて首を振った。
「いえ、充分です」
それを聞いた天使――の仮装をしたリュシアンは悪魔に扮したヴァネッサの目を見て頷くと、彼らの目的地へと視線を移した。
「言うまでもないことですが、どうかお気を付けて。あの街は、今や帝国の前線基地です」
二人の視線の先にあるのは、高い城壁に囲まれた堅牢な都市だった。城塞都市リュンヌ――ほんの少し前まで連邦領だったその街は、先の第三次攻防戦により帝国の手に落ちた。これから二人はこの街に入り、帝国に潜入していた連邦の関係者と接触する任務を負っていた。
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