竹鉢初夜「い、いくぞ…………」
緊張の瞬間。己の手が情けなくも震えているのがわかる。荒くなる息を必死で抑え、深呼吸をして、三郎の浴衣に手をかける。すると、「待って」という声とともに三郎の手がそっと俺のそれに重なり、俺はどきりと胸が高鳴るのを感じた。
「さ、三郎?」
「……自分で脱ぐ」
──自分で脱ぐ?
三郎から放たれた言葉に耳を疑う。あの、三郎が、俺の前で、自分で?
そんなことをぐるぐる巡らせているうちに、ぱさり、という布が擦れる音が聞こえ我に返る。はっとして顔を上げると、顔の色よりほんの少しだけ白くしなやかな三郎の身体が目に入った。
俺はごくりと生唾を飲む。すると、三郎は少しだけ笑って、「顔、怖すぎるぞ」と俺の額を小突いた。
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