「恋」を知らない友人へ「そういえば、この間友人と恋っぽい味のケーキを食べたんだ」
たまに時間を見つけては暇潰しにと手伝いに来ていたジオコのバルーンショップで、山積みになり経営が不安になるほどのおざなりになった経理書類を見やすいように仕分けしていたイグルドに紅茶を淹れながらジオコが声をかけてきた。
瑞々しいマスカットのような柔らかな香りはダージリンだろうか、この季節ならオータムナルの季節だ。砂糖やミルクに合うこの季節の紅茶は美味いんだよな…等と呑気に考えながら、目線のみをシルフという種族柄か年齢よりも幼く見える女性の深みのある瞳を見つめた。
「なんやそれ、そんなケーキ売ってるとこあったっけ?」
外食する機会が特になく街の流行りに疎いせいか、そんな可愛らしいコンセプトのケーキなど聞いた事ないと会話に乗っかれば、ジオコは楽しげに話を続けた。
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