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    nanayuraha

    @nanayuraha

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    nanayuraha

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    クリック君と、ループし続けるテメノスさんと。クリテメ…だと思いたい。
    いつも以上に意味不明だし、捏造しかない。

    終わりをと望む貴方を、嫌だと僕は強く抱きしめた。


    『一条の光』


    明けぬ夜、導かれた先、仲間達と辿り着いた海底深く封印された筈のヴィーダニア島。そこにある暗黒神ヴィーデが祀られてる祭壇。
    その燃え盛る黒き炎の前に、僕が探し求めていたテメノスさんがいた。

    「一人で来るとは、呆れて言葉も出ませんね。余程己の腕に自信があるのか、それとも事態をいまいち理解していないのか…。」

    君はどちらなのでしょうね、子羊くん。
    そう言って笑うテメノスさんは、普段と変わりなかった。場所がこのヴィーダニアでなければ、邪神の復活が迫っているという今でなければ、交わされていたのはきっと世間話であったのだろう。そうでない事がとても悔しかったし、納得出来なかった。

    「一人でどうにかなると思っているのなら、その溢れんばかりの自信をへし折ってあげましょう。…さぁ、何をしているのです?大事なお仲間を今すぐここに呼びなさい、子羊くん。」

    いつも僕を子羊と呼んでからかい、でもちゃんと学んだ事や成長した所は褒めてくれる。僕にとってのテメノスさんは、そんな厳しくも優しい人だった。
    それなのに、どうしてこんな事になってしまったのか。僕は未だに納得していない。出来るなら戦いたくない、戦わなくていい理由をずっと探していた。それには真実を明らかにしなければならず、けれども真実に辿り着くためにはどうしてもピースが幾つか足りなかった。だから、

    「僕が、皆に頼みました。少しだけで良いから、貴方と二人きりで話がしたいと。」
    「……。」
    「あ、安心してください。もし万が一僕が指定した時間以内にここから戻らないようなら、そして会話を望む僕に貴方が危害を加える様な素振りをみせたのなら、すぐに皆はここへ駆け付ける様に手筈は整えています。」

    へぇ…と此方を探るように見つめるテメノスさんに、だって当然でしょう?と僕は笑った。

    「例え発生しうる確率は1%未満であったとしても、0でないのならそれを含めて考えられる全ての事態に備える事。貴方がまず最初に僕に叩き込んだ事です、他の誰でもない貴方自身が。…ねぇ、テメノスさん。」

    どうして貴方がこんな事をしたのか、僕は真実が知りたいんです。
    そう望む僕に、テメノスさんは溜め息を一回だけついた。何も聞かずに私を断罪してくれれば良いのに、と。

    「…一つ、面白味も何もない大変つまらない話でもしましょうか。最期まで運命に抗おうとした、哀れな道化師の話です。」

    テメノスさんの口から語られたのは、思ってもいなかった様な真実だった。このテメノスさんは、僕が死ぬ世界線から来たのだという。
    僕の死を乗り越え、真実を明らかにし、夜に打ち勝ち、無事に夜明けを迎えたのだという。自分にとっての犠牲はあまりにも多く、心の底から喜べずにいた。けれども、物語はとりあえずハッピーエンドとして幕を閉じたのだと。
    それなのに、何故か気付いたらフレイムチャーチの教会で子供達に紙芝居を読んであげていたという。聖火神エルフリックと暗黒神ヴィーデの戦いの紙芝居を…。

    「正直最初は、救いの手だと思ったんです。もしかしたら失われた命を救う機会を与えられたのではないかと、心の底からそう思いました。私は都合の良い事に、これから起こる事柄を全て知っている。全ては無理だとしても、それでも救える命がきっと有る筈だと…。」

    結果は散々なモノだったと、テメノスさんは首を横に振った。誰も救う事は出来ず、本来失われる筈のない命まで犠牲になり、世界は闇に閉ざされてしまったという。
    そして再び時間は巻き戻ったのだ、と。

    「何十回何百回と試行錯誤しながら繰り返し続けた途中で、ふと私にとっての一番最初と同じ事をしてみたんです。全てを知っているというのに、教皇を見殺しにし、君を見殺しにし、仲間達の大切だった人達を全部見殺しにし、そして夜明けを迎えてみました。心が引き裂かれんばかりの苦痛に耐えなければいけませんでしたが、せめて私が最初に至った結末は、乗り越えざるを得なかった事柄は、大切な人達の犠牲は、間違いじゃなかったと証明したかった。それだけ、それだけだった筈なのに…。」

    結果は同じ、再び時間は巻き戻ってしまった。
    全てを否定された、そう理解した時に折れてしまった。その時から全てどうでも良くなってしまったのだと、テメノスさんは言う。自分の命も、未来さえも。

    「いや、違う。救う道はあったのに、それに至れなかったと認めたくはなかっただけ。自分のちっぽけでくだらないプライドを守る為に、私は…。ふふ、何でもありません。大丈夫です。だって全部嘘です、嘘なんですよ。ふふ、ふふふ…。」

    同情しないでくださいね、だって全て嘘ですから。
    そう言うと、テメノスさんは断罪の杖を僕に向けた。

    「…さぁ、時間です。剣を構えなさい、聖堂騎士クリック・ウェルズリー。」

    促されるまま、僕は剣を抜いた。仲間達が打ち合わせ通りここに駆けつけてきた。
    テメノスさんは僕達を見回すと、にっこりと慈愛の満ちた笑顔を浮かべた。

    「既に、運命は全て書き変わっています。…まもなく邪神ヴィーデが復活します、このままでは世界は完全に闇に閉ざされるでしょう。君達がすべき事は、邪神ヴィーデの復活を目論む私を殺し、それを阻止する事。…もし仮にヴィーデが復活したとしても、今の君達ならきっと退けられるでしょう。」

    世界を救いなさいと言うテメノスさんに、僕はそれだけじゃありません!と叫ぶ。

    「世界だけでなく、貴方も救います!それこそが、それこそが僕のやるべき事です!!」

    絶対に諦めませんと叫ぶ僕に、君は何処であっても君なのですねとテメノスさんが一瞬だけ泣きそうな顔をした気がした。


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