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    風呂_huro

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    風呂_huro

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    わたほむ

    海の叫び「あんまり遠くへ行っちゃいけないよ、帆村君」

     酔い覚ましに自然と足が向いた海の砂浜で、帆村は裸足になって、まだ温い砂の上を走った。たまに転びそうになりながら、海水が爪先を浸るくらいの場所で立ち止まった。

    「大丈夫だよ、僕の身体は機械だから。壊れても元通りになる」
    「壊れても戻らないものだってあるんだよ」

     帆村はこちらを振り向いて、静かに笑った。

    「そうかな。僕は自分を失いすぎて、ただ身体だけを引き摺ってる気がする。もう僕の中に、魂は無いのかもしれない」

     帆村は水平線をじっと眺め、波しぶきを浅く蹴って、溜め息をついた。

    「そう思わないと、生きていけないんだ」
    「帆村君」

     僕は帆村の思いを全て掬い上げることは不可能だと思った。その絶望はまた僕を苦しめた。彼は僕の目を通して、別の場所を見ている。僕の存在は通過点でしかない、そう思う時がある。その営みを止めることはできない。否定もできない。僕には、彼の心が理解できるからだ。

    「もう身体が冷える、帰ろう、帆村」

     僕は彼の手を握って、海を決して振り返らず歩き出した。帆村は後ろ髪引かれるように、たどたどしく、けれど僕の言う通りに後に続いた。

     渦巻くような海水の叫びを聞いて、僕は一気に酔いが醒めた気がした。
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