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    風呂_huro

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    風呂_huro

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    猫の日の墓水甘々ニャンニャン話です

    猫になりたい「……で?何か、言いたいコトはありますか?」
     黙々とした晩飯の最中に、俺は大きな声でハッキリと言った。目の前にいるおじさんはモジモジしながら、黙っている。俺はジトッとした目で見つめていた。言い逃れがあるなら今言えとばかりに睨みつけると、おじさんは視線を合わせて、ピャッと下を向いて、顔を真っ赤にしている。
    「言いたいことは…いろいろある…」
    「全部言ってください。今すぐに」
     俺の強い口調に、おじさんは視線を合わせられない。
    「その…ゴミ捨て場を、漁ったのは謝る…いい椅子が…あったから…」
    「その歳でゴミ捨て場漁るなんて、相当おじさんも参っちゃってますね。貧乏癖が抜けてないんだろうな。椅子の一つや二つ、買えばいいじゃないですか。それで?」
     俺は先を促した。
    「それで…椅子の下に、猫がいて…可愛いの、白と黒の斑模様で、足が短くて…」
    「それで?」
    「そ、それで…撫でようとして、触ったら…こうなっていた…」
     おじさんの頭にはぴょこんと猫の耳が二つ。お尻には尻尾が生えていて、呑気にゆらゆらと揺れていた。
    「おじさん、人の迷惑考えてないでしょう?何でそんな化けネコ憑けてきたんですか?俺が祓う手間を分ってないですよね?ねえ、ねエ?」
    「その…猫さんを取り憑けてしまったのは、謝る…」
     おじさんは猫さんと言いながら、少しこの格好が気に入っているようだった。
    「幾らくれますか」
    「え」
    「タダで祓ってもらおうなんて甘いですよ。幾ら金くれますか?」
     そう言うと、おじさんの耳はペションと垂れて、しょんぼりした。
    「お金は、ないから…とにかく、人間に戻してくれ…」
    「イヤですね。金ないなら、一生そのままでいてください」
     するとおじさんは、なんと顔を真っ赤にして「ウン」と言ったのだ。
    「エ?ウン、って?本当に…そのまま生活するんですか?」
    「その、まあいいかなって…茶目っ気があるし、いいじゃないか」
     茶目っ気がある。訳が分からない。
    「可愛さ狙いなら、筋違いですよ。おじさんは可愛くないし。いいですか、おじさん。あなたは『本当』に可愛くないんですよ。俺はこれっぽっちも、可愛いとか、魅力的とか、もっとそのままでいて欲しいとか、餌をあげたいとか、撫でたいとか、これっぽっちもね!思ってないんですよ」
    「そうか、ありがとう」
     おじさんはへにゃりと微笑んで、喜ぶように尻尾をたしたしと畳に叩いた。おじさんの鈍感さに毒気が抜かれたようになる。自分のピンチってモンを分かってない。化け猫に身体を奪われるとか、お前は死ぬと言われたところで、アリガトウと返す男なのだ。俺はハアと大きな溜め息をついた。
    「仕方ないですね…貸しですよ、高いですからね、僕は。祓ってやるのを土下座して喜んでくださいね、もう一日一個コッペパンとか言ったら、張り倒しますよ、それくらい高いんですからね」
    「いいのか?」
    「いいって何が?」
    「触らなくて…耳とか、尻尾とか。ふかふかしてるから…」
     俺はガックリと肩を落とした。何でそんなに呑気でいられるのか。特殊能力なんじゃないか?人間の中でも一番愚かな、理解力の無さを具現化したんじゃないか?そこまで思って、じゃあそれならと、おじさんの前に座って猫耳を両手で触ってみた。
    「へえ、ホントに温かいんだ…」
     スリスリと撫でると、おじさんは顔をさらに赤くした。
    「…鬼太郎…敏感だから…」
    「は?」
    「…敏感な、ところだから…優しくして…」
    「ハア??」
     イタズラ心が出てきて、尻尾を少し強くギュウと握ってみた。おじさんはびくりと肩を震わせて、どうやら気持ちよくなっているようだ。俺は尻尾の付け根を撫でさすって、耳を甘く歯で噛んでみた。
    「……あっ…」
    「おじさん、一人で気持ちよくなっちゃダメでしょ、俺のことちゃんと見てよ」
    「…恥ずかしい、から…」
     俺はおじさんの反応にニヤニヤと笑い始めた。
    「おじさん、やっぱアンタ一生このままでいてよ。これなら人前に出るの嫌ですもんね?アンタ一生この家で、煮干しを食って生きていくんです。大丈夫ですよ、俺がお世話してあげますから。ずうっとニャンニャンしてて下さい。俺だけのために」
    「…えっ…え…?」
    「そうだなア、駄賃は毎日毎晩セックスかな。俺の気が晴れるまでケツ出してくださいよ。いいでしょ?今とそんな変わらねえし」
    「…き、鬼太郎、俺がもし…イヤって、言ったら…?」
    「イヤでも何でも、そんなコト俺が決めますよ。おじさんに拒否権がある訳ないって、今更じゃないですか?すっごく気持ちいいですよ、ね?いいでしょう、ネエ?」
     俺は自然におじさんの身体を畳に倒した。おじさんは俺を熱っぽい目線で見つめて、小さく、こくりと頷いた。チョロいな、全く。
    「猫のおじさんも、なかなかウマそうだな」
    「あまり…激しくしないでくれ…」
    「どうだか、ね」
     俺はおじさんに深くキスをした。何故かおじさんも積極的に舌を絡めていった。珍しい。猫の発情期ってやつだろうか?それならと、猫耳をすりすりと優しく擦ってやって、トントンと腰を弱く、じっくりと叩いてやった。おじさんは身震いをして、俺の背中に腕を巻きつけて、ぎゅっと離さないようにした。
    「…きた、ろう…」
    「何ですか、おじさん」
    「…猫でも…いいかも…もう…」
     おじさんは尻尾を器用に俺の腰に巻きつけて、へにゃりと笑った。狡いな。こういう時、おじさんはズルい。天然ボケみたいなコトして人を煽ってくる。苛々する。無自覚で愛情を乞う仕草にドキドキする。何だよ、全く、うざったい!
    「良かったですね、相手が俺で」
    「……え?」
    「俺がたっぷり味わってあげますよ、感謝して下さいね。ネコチャンのアンタを食べる俺を、ね」
     痩せて貧相な男の身体を嬲って、これから猫のおじさんを食い荒らすのを想像した。ああ、もしかしたら。そうだやっぱり、俺も猫みたいなモンだな。残飯を食い荒らす猫のように、おじさんを頂いてしまおう。今日も、明日も、ずうっと。
    「おじさん、可愛いよ…」
     思ってもいないコトを言う。言った方が感度がいいからだ。
    「……うん…」
     小さく呟いて絆されるおじさんも、まあいつもよりは感じがいい。俺の愛猫はおじさんで決まりだ。マア、少しは、化け猫に感謝してやろうかな。なんてね。
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