「…………ぐう……」
かくかくと頭を揺らしながら、床に胡座をかいて座っている牛鬼を後ろから見つめる。
どうやらウトウトしているようだ。
「(かわいい……)」
ふと、牛鬼の頭から生えている大きな角に目をやった。
大きくて黒光りしているそれは牛鬼の力を表しているようにも見えて、普通の妖怪ならこれを見た時点でまず近づかないだろう。
「(そういえば、牛鬼の角って触ったことないかも?)」
好奇心から角にそっと手を近づける。
「バレたら怒られるかもな〜」と思いながらも、俺は牛鬼の角に優しく触れた。
「(あ、ツルツルしてる)」
なんだか楽しくなってきて、今度はその角の先端部分を軽くつまんでみる。
「ん…………」
すると牛鬼が目を覚ました。
「あ、おはよう牛鬼」
「……お前何やってんだ」
声をかけると、牛鬼は呆れた顔でこちらに振り向いた。
「え? あ、いや……なんとなく気になって……」
スリスリと手を動かしながら牛鬼の問いかけに軽く答える。すると──
「んっ……」
「…………え?」
牛鬼が、少し艶っぽい声を漏らした。
「……牛鬼、もしかして……」
「……ちげぇ、いいからその手離せ」
牛鬼は俺の手を払うように自分の腕を動かしたが、なぜかそれは弱々しいものだった。
「やっぱり、感じてるよね?」
「ちげえっつってんだろ、あんまやってっとマジで喰っちまうぞ」
「だってさっきの声絶対そうだし……」
そういえば、鹿の性感帯は角だと言う話を聞いたことがある。
鬼でも同じようなものなのかもしれない。
俺は再び角に触れ、撫でたり掴んだりしてみる。
「くっ……ふ、うっ……」
やはり反応している。というよりむしろ、かなり敏感になっているようだった。
「(これは……チャンスかもしれない……!)」
いつもやられてばかりだから、たまには俺の気分も味わってもらおう。
そう思いまた手を動かそうとした、その時──
「……おい」
「へっ?」
ドスの効いた牛鬼の声に、思わず変な声が出る。
恐る恐る牛鬼の顔を覗き込むと、額に青筋を立てていた。
「あんま調子乗ってんじゃねえぞ……」
「(あ、やば……)」
そして次の瞬間、視界が大きく揺れ動いた。
背中に強い衝撃を感じ、自分が押し倒されたことにようやく気づく。
「うわっ…… ちょ、ちょっと待っ──」
慌てて弁解しようとするが、牛鬼はそれを遮るように首元へと顔をうずめた。
「お前が悪いんだからな」
そして、そのまま勢いよく噛まれる。
牛鬼の鋭い歯が肌に食い込んだ。
「いっ……」
痛みとともに、じんわりと血が流れ出る感覚があった。
牛鬼はそれを舌で舐めとる。
「いいか? この俺を怒らせたんだ。……覚悟しろよ」
このあとめちゃくちゃ抱き潰された。