宇宙でたったひとりだけ②「アビー」
どきりと心臓が跳ねる。どうにも弱い。ラーカスの村に着いたときもそうだった。レティシアは、アベラルドのひた隠しにしている想いを見透かして、意思を持って揺さぶりにきている。『本当にそれだけ?』
(隠しているわけでは)
レティシアに対する愛情を、子供の頃から大人になった今に至るまで、アベラルドが隠したことは無い。それこそ、幼気な騎士の誓いを立てるよりずっと前から。レティシアは、自分にとってかけがえのない、自分の命なんかよりよっぽど守りたい、たったひとりの宝物だった。
アベラルドが彼女を大切に想っていることは、二人を知る全員に伝わっていると言い切れる。
ーーこの国の王女だから、大切だ。
ーー自分は騎士であるから、彼女を大切にするのは当然のことだ。
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