兄さんは私の恋人 「七緒、ごめん。待たせたか?」
「ううん、そんなことないよ。」
大学の食堂にて兄さん――五月と待ち合わせをしていた私は五月が少し遅れてきたことにほっと胸を撫でおろした。私の正面に座った五月は私と同じようにお弁当を取り出す。今日のお弁当は五月でも私でもなく三鶴さんが作ったものだ。最近、料理も勉強中だという三鶴さんだがどれも美味しく舌を巻いてしまうほどだった。
「…兄さんの味に似てる、兄弟だから?」
「…まあ、俺も教えたりしてたしなあ……」
そんなことを言いながらお弁当をつつく兄さんを微笑ましく思えて思わず見入ってしまう。――と、
「天野くん、隣いい?どの席も埋まっちゃってて困ってるんだよね」
そう声を掛けてきたのは見知らぬ女性だった。しかし私と五月がこうやって仲良く話しているのにこうやって割って入ってくる空気の読めなさに唖然としてしまう。話しかけられた五月は困った様子を見せつつこちらに視線を送る。
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