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    遥姫*はるき

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    遥姫*はるき

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    恋に落ちるのは一瞬
    ※学パロです。notフォル学のつもり

    しゅんかん【ネロファウ♀】しゅんかん【ネロファウ♀】

    ※学パロ。(notフォル学)
    ※ファウストにょた化

    ファウストは悩んでいた。
    その店は通学路にある人気なカフェであった。通る度に、待ち人はおらずとも窓から見える店内は賑わっていた。ファウストも何度か利用したことがあり、店内はほぼ満席であるにもかかわらず落ち着いていて、上品なBGMが時間の流れをゆったりさせていた。静か過ぎず、騒がし過ぎない空間がファウストに合っていた。
    そんなカフェが最近、ネコをイメージした限定メニューを出したのだ。もちろん、ファウストは可愛らしいラテアートからケーキまで一通り食べたが、一つだけ食べていないものがある。それが、この看板にあるパフェであった。三毛猫模様のアイスにはネコの顔が書いてあり、肉球型のチョコレートやしっぽをイメージしたクッキーなど、まさにネコ尽くしの一品だ。是非ともこれを食べたい、と思っていたが問題がある。このメニューは些か一人前としては多すぎるのだ。一人でぺろりと食べ切る者もいるだろうが、食が細いファウストでは食べ切ることは至難の業だ。友人を連れてきてもよかったが、生憎日程が合わずだらだらと予定が流れ、本日が最終日となってしまった。そのため、ファウストはずっと店の前で悩んでいた。
    食べたい気持ちはもちろんある。しかし残したくない。お金を払っているとしても、食べ物を残すことは自分の理念に反していた。だからといって食べ切れるかと言われると自信はない。弁当を少なめにしたとしても、このボリュームは手を出しにくい。今日が最終日であり、明日以降はこれを食べることができない。ケーキやドリンクが美味しかったため、これも美味しいに違いない。
    ファウストはもんもんと悩んでいた。その時、ふと耳元で吹き出して笑ったような声が聞こえた。大袈裟に肩を揺らして、恐る恐る振り返ると、そこには口元を抑えたネロがいた。
    「あ、やべ。バレた」
    「そこにいたなら声をかけてくれ」
    「ごめんごめん。ファウストが百面相してるのが面白くて」
    「見世物じゃない」
    ネロは口を隠すのをやめて、大きく笑った。ファウストは恥ずかしさを出さないように、ネロを睨みつけた。
    「だからごめんって。その詫びにここの店、一緒に入らねぇ?」
    「え」
    ネロの意外な提案にファウストは目を丸くした。ネロは看板を見て話を続ける。
    「俺、この店入ったことないし気になってたんだよ。それにそのパフェ、食べてみたいからな」
    「わ、私もちょうど入ろうと思ってたんだ。奇遇だな」
    「これ今日がラストじゃん。なら早く行こうぜ」
    「うん」
    ネロは早速、店の扉を開けた。予想外の展開になったが、無事に目的のものを食べることができそうだ。ファウストは顔を綻ばせ、ネロの背中を追って店の中に足を踏み入れた。

    ***

    「あのカフェ、なかなか雰囲気が良かったな。メニューも美味しかったし、通いそう」
    「気に入ったようなら良かったよ。あそこは私も結構通ってる」
    カフェを後にし、二人は並んで歩いていた。
    ファウストは限定のパフェを食べることができ、満足していた。パフェは案の定大きく、食べ切れるか心配をしたがネロと半分こにしたおかげで完食ができた。おまけに、先程の詫びだから、とネロが支払いを請け負いファウストは少しばかり居た堪れない気持ちであった。今度、礼としてカフェで売っているクッキーでも渡すか、と考えた時だった。
    急にネロの足が止まった。気づくのに遅れてしまい、ファウストはネロの前で止まり、振り向いた。ネロはどこか真剣な表情をしており、ファウストの視線を奪った。
    「ネロ……?」
    ファウストは不安の帯びた声でネロの名前を呼ぶ。ネロは困ったように笑った。
    「ねぇ、気づいてくんねぇの?」
    ネロの言葉の意味がわからず、首を傾げる。何に気づくというのだろうか。ファウストはじっとネロの黄金の瞳を見つめた。
    「俺さ、本当は通学路反対なんだよ。こっちの道を通ると遠回りになる」
    ネロとともに下校したことは何度かある。あのカフェよりも前の道で別れることはファウストも知っていた。
    「そうだな。でも、あのカフェが気になってたからこっちに来たんじゃないのか」
    「あーーもう、やっぱ気づいてねぇな」
    ネロはため息をついて頭をかく。先程からネロの発言が核心を得ず、ファウストは眉を顰める。
    「言いたいことがあればはっきり言ってくれ」
    「だからさぁ!遠回りしてでもファウストと一緒にいたかったってこと。意味わかる?」
    「へ……」
    眉間に寄っていた皺はすぐに消えた。ネロの赤くなった顔を見ていたら、自分の頬にもその熱が移っていくような気がした。ネロは観念したからなのか、それともファウストに解らせるためなのかどんどん言葉が溢れた。
    「あのカフェをファウストが気に入ってることも知ってたし、限定メニューのことも知ってた。どんな口実付けて誘おうかずっと考えてて、たまたま今日、それが上手くいってデートできたわけ」
    「待って」
    「誘った時の表情とか、パフェを前にして嬉しそうにするファウストが可愛すぎて、正直味なんて忘れちまったぐらいだよ」
    「待ってくれ」
    「しかもこうやって、いつもより長く一緒にいられるのが幸せすぎてほんと、顔緩みそう」
    「だから!」
    ファウストは咄嗟にネロの口を押さえた。押さえなくてはまだ言葉が出てきそうだったからだ。
    ネロはなんと言っていた。デートというフレーズやかわいい、幸せ、などが頭の中を駆け巡っていく。それに合わせてファウストの顔が真っ赤に染まっていく。最近、ヒースクリフに勧められて読んだ恋愛小説がある。その小説の中に同じような状況があったはずだ。物語の中ではこの後、男の方が告白をして、付き合う事となり見事ハッピーエンドで幕を閉じた。なぜ今になってその小説が頭をよぎったのか。
    ネロの口元を押さえていた手が、ネロによって退かされる。ファウストの思考回路はとっくにオーバーヒートしており、ネロの行動を見つめることしか出来なかった。優しく包み込むように手を握られ、ネロの唇がファウストの指に触れる。びくり、と効果音が出そうなほどファウストの体は大きく揺れた。
    「もう待てない。はっきり言うけど、俺はファウストが好きだ」
    ネロのまっすぐとした瞳、夕日に照らされ、きらきらと光る髪。髪とは対照的にじわじわと熱せられるような赤に、骨ばった手。初めてファウストがネロを異性として意識した瞬間だった。いつもの優しく、あれこれ言いつつも面倒みの良いネロはここにはおらず、一人の男としてここにいた。
    その瞬間、体の内側から熱が上がってきた。こんなことは知らない。これは一体なんなのか。呼吸の仕方さえも忘れてしまいそうだった。はくはく、と口を開けたり閉じたりを繰り返す。猛スピードで鼓動が刻まれている。頭の中はネロのことしか考えられなくなっていた。
    不意にネロが優しく微笑んだ。ファウストは息を呑む。
    「こんな状況で抵抗しないってことは、脈アリだって思っていい?」
    ファウストは必死に声を絞り出す。
    「……それはずるすぎないか」
    「都合よく考えたいからさ」

    Fin.
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    遥姫*はるき

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    ※学パロです。notフォル学のつもり
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    ※学パロ。(notフォル学)
    ※ファウストにょた化

    ファウストは悩んでいた。
    その店は通学路にある人気なカフェであった。通る度に、待ち人はおらずとも窓から見える店内は賑わっていた。ファウストも何度か利用したことがあり、店内はほぼ満席であるにもかかわらず落ち着いていて、上品なBGMが時間の流れをゆったりさせていた。静か過ぎず、騒がし過ぎない空間がファウストに合っていた。
    そんなカフェが最近、ネコをイメージした限定メニューを出したのだ。もちろん、ファウストは可愛らしいラテアートからケーキまで一通り食べたが、一つだけ食べていないものがある。それが、この看板にあるパフェであった。三毛猫模様のアイスにはネコの顔が書いてあり、肉球型のチョコレートやしっぽをイメージしたクッキーなど、まさにネコ尽くしの一品だ。是非ともこれを食べたい、と思っていたが問題がある。このメニューは些か一人前としては多すぎるのだ。一人でぺろりと食べ切る者もいるだろうが、食が細いファウストでは食べ切ることは至難の業だ。友人を連れてきてもよかったが、生憎日程が合わずだらだらと予定が流れ、本日が最終日となってしまった。そのため、ファウストはずっと店の前で悩んでいた。
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