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    遥姫*はるき

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    遥姫*はるき

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    みんな違ってみんないい
    □酔って彼氏自慢大会する二人

    ほどほど【ブラネロ♀、レノファウ♀】ほどほど【ブラネロ♀、レノファウ♀】

    ※ネロ、ファウスト女体化。

    試合開始の合図は突然鳴り響いた。
    場所はネロの部屋だった。夕食を終えて、魔法舎が静かになる夜深く。ある魔法使いはバーでしっとりと酒を飲み、ある魔法使いは健康的な時間に就寝していた。ファウストは昼間に出かけた際に見つけたいいワインを手に持って、ネロの部屋で晩酌をしていた。ネロもまた、とっておきのワインを取り出し、仲良く飲んでいたはずだった。しかし、その空気は突如として崩れたのだった。
    二人には恋人がいる。ネロにはブラッドリー、ファウストにはレノックスがいる。お互いにそのことは知っていた。酒を交わしつつ、自然と恋愛の話になることは常にあった。今日も今日とてその流れになり、ほんのりと頬を染めたファウストの一言が原因となる。
    「ところで、ブラッドリーは君のことを大切にしているのか?」
    「は」
    ネロは目を見開きファウストを睨む。ファウストは怯むことなくワイングラスを煽る。
    「あんなにガサツで乱暴な北の男だ。それに、一度別れたこともあるんだろ?大丈夫なのか?」
    「なにそれ。だったらファウストだって、羊飼いくんと仲良くやってんの?」
    「は」
    今度はファウストがネロを睨んだ。ネロはそんな視線を交わし、つまみであるチーズを口に含み、ワインで流し込んだ。
    「だって羊飼いくんはファウストのこと主君と思ってんだろ?そんなやつが恋人だとどうなの?」
    酒が入りすぎていた。原因はそれだ。しかしこの場にはその二人を止めることのできる人物などいなかった。そもそも二人で飲んでいたため、第三者などいないも同然だった。ネロとファウストの視線が絡む。ばちばちと火花が散っているようであった。和やかな雰囲気が一変し、肌を刺すような空気感になった。互いに睨む目は解かれない。
    先に机を叩いて宣戦布告をしたのはファウストだった。机に置かれていた皿たちが微かに揺れた。
    「ふん。いいだろう、ネロ。レノのいい所をたっぷり教えてやろう」
    ネロもまた、机を叩く。皿達は震え上がった、
    「やる気じゃん。こうなったら私だって、ブラッドの良さを存分に味あわせてやるよ」
    夕食後の晩酌が、恋人プレゼン対決に変わった瞬間だった。

    ***

    先手を打ったのはファウストだった。
    「まずレノの良さはあの体格だ。大きな体に包まれると安心感があるし、私よりも体温が高いからあったまる」
    ファウストはネロの反撃を待つことなく言葉を続ける。
    「あの体にすっぽり包まれてみろ。幸福感が半端ない」
    「ふーん」
    ファウストは得意げに語っていた。レノックスとファウストは身長差はもちろん、体格差がかなりある。小柄で細身なファウストは少し力を入れれば折れてしまいそうだ。実際はそんなことなく、むしろそんなことをしてしまえば魔法で圧倒されるだろうが。小さなファウストはレノックスに抱きしめられてしまえば、見えなくなるに違いない。女子たるもの、彼氏に包まこまれるように抱きしめられるのは夢の一つでもある。ネロはつまらなさそうに相槌をうった。
    「ブラッドに抱きしめられたら、私だって腕の中に収まるけどな」
    「君たちは私たちほど身長差がないだろ?レノックスのような包容力は感じられないだろうな」
    「身長差がないといいことだってある」
    ネロはにやりと笑った。ファウストは大人しくネロの言い分を聞くようだった。グラスに残ったワインを一気に飲み、グラスに注ぐ。ついでに空になりかけていたファウストのグラスの方にも注いでおく。ファウストはこんな時にもかかわらず小さな声でありがとう、と言った。それが何だかむず痒かった。
    「キスがしやすい」
    「なっ……!!」
    ファウストが目を見開いた。今度はネロがしたり顔をする。その顔が見たかったのだ。注いだばかりのグラスに口をつけてからファウストに攻撃を仕掛けた。
    「少し腕を引っ張ればキスできるし、なんなら背伸びすればすぐだ。したい時にキスできるって最高じゃん?」
    ネロの口は止まらなかった。
    「それにさ、ブラッドは荒々しい口付けしてくる時もあるけど、たまに触れるだけのキスとかでこにしてくるからそこが堪らない。あんな北の男が優しいキスだぞ?ギャップモエってやつ?」
    「ギャップモエ?」
    「賢者さんが言ってた。見た目と行動の差があって、そこに惚れることだって」
    ネロは今朝のことを思い出す。いつもの様に朝食の準備をしていたら、厄災の傷から戻ってきたブラッドリーがキッチンにやってきた。朝も早く、二人しかいないキッチンは直ぐに恋人同士の空気に変わった。たわいもない会話をしつつ、ブラッドリーの腕が腰に回った。キスの合図だと感じ取り、ネロは包丁を置いてゆっくりとブラッドリーの方を向く。乱暴に唇を奪われるものだと思っていたら、降ってきたのは優しい口付けだった。驚いていたら、ブラッドリーがふわりと笑った。その笑顔が朝日に照らされ輝いていた。ネロはますます目を見開いた。温かい日差しに包まれるような気持ちが膨れ上がる。ブラッドリーはネロの頭を撫でてから、キッチンを後にした。一人になったネロがその場に蹲ったのは言うまでもなかった。
    いつもは強引で乱暴さが目立つブラッドリーが、壊れ物を扱うようにあんなにも優しく触れてくるなんて思ってもいなかった。もちろんそんなことを今までされたことがなかった。一種の気の迷いだったかもしれない。だが、それだけでネロはブラッドリーのことをより一層愛おしく思ったのだ。
    ネロが思い出して笑っていたら、ファウストが変なものを見るような視線を送ってきた。
    「ふふ、いいだろ。優しさと激しさ、どっちも持ってるのは」
    言外に、レノックスは優しさしかないだろう、と意味を込めたが伝わっているかはわからない。ネロは気分よく口が回る。
    「そっちはどうなんだよ、キスとか。身長、体格がそんだけ違うと大変じゃない?」
    「……」
    「え、待って。キスがまだとか」
    「そんな訳ない!!」
    ファウストは顔を真っ赤にして叫んだ。存外大きいファウストの声は、もしかしたら隣の部屋はもちろん、この階に響いてしまっているかもしれない。ネロは人差し指を唇に当てて、静かにするよう示す。ファウストも思っていたよりも大きな声が出てしまったことを反省し、小さく呪文を唱えた。凡そ防音魔法だろう。今更な気がするがないよりはましだ。
    ファウストはこほん、と一つ咳払いをした。
    「キスはしたことはある」
    「なんだ。でもなんで何も言い返してこないの?まさか、羊飼いくんってキスが下手?」
    「下手、ではない……と思う。私は他のキスを知らないから」
    「うっわぁ……今の羊飼いくんが聞かせたかった」
    「うるさいなぁ」
    ファウストは近くのつまみに手を伸ばす。口の中のものがなくなってから、渋々口を開いた。
    「その、長いんだ」
    「長い?」
    「キスがいちいち長い、と思う」
    「あぁなるほどね」
    ファウストはある休みの日を思い出した。
    その日は授業も任務もなく、また、北と西の魔法使い達も出払っていて静かな日だった。こんな日こそ部屋に籠るのが一番だと思っていたが、恋人のレノックスが訪れたことにより、お部屋デートに予定を変えた。レノックスが連れてきた羊達を思う存分撫でていたら、急にレノックスの手が触れてきた。ぴくり、と小さく肩を揺らし恐る恐るレノックスの方を見た。眼鏡の奥の瞳から欲が見えてしまい、顔をそむけたくてもできなくなっていた。レノックスと居る時はサングラスを外している。ゆっくりと瞳を閉じて唇を受け入れる準備をする。
    待ち望んだ熱はすぐにやってきた。舌で唇をつつかれるのを合図に口付けが深くなる。いつの間にか腰と頭に手を回されており、ファウストの逃げ場は無くなっていた。ここからが問題だった。
    逃げ場がなくなると、キスを途切れさせる手段がなくなる。顔を背けたり、体を離したりができなくなる。つまり、レノックスが満足するまでキスは続けられるのだ。さすがに息継ぎのために唇が離れる時はあるが一瞬に近い。キスに不慣れなファウストはすぐに酸欠になる。やめるようにレノックスの体を叩いたところで、びくともしない。結局、キスでへろへろになってレノックスの元に倒れ込むまでがワンセットだった。
    思い出す度に肩を落としてしまう。自分にもっと持久力があったらよかったのに。四百年も引きこもってしまったがために、恋愛とは無縁の生活をしてきた。そのため、キスの一つもわからない。毎回レノックスに任せっきりになっているため、罪悪感が胸を襲っていた。
    「私がもっと慣れてたらな」
    「いや、羊飼いくんはファウストが何も知らない状態なの、好きだと思う」
    「は?」
    あまりにも衝撃的な言葉で、手に持っていたグラスを落としそうになった。ネロは何も気にしていないようだった。
    「私の偏見だけど」
    「どういったらそんな偏見になるんだ」
    「まぁまぁ」
    空いたグラスにワインを注がれ話を流された。理由を問いつめたかったが、酒の回った頭ではどうでもよくなっていた。相当飲んでいるな、とどこか冷静な自分が警報を鳴らしていた。しかしネロも同じように酔っているため、ネロがそうならいいか、と頭の片隅にいた理性の保った自分を押し出した。
    「でも先生いいよな」
    「何がだ?」
    「胸、けっこうでかいじゃん」
    今度はワインを吹き出しそうになった。寸でのところで止めた自分を褒めたい。ファウストはネロを睨んだ。ネロはにやにやと笑っていた。
    「羊飼いくんに育てられた?」
    「っ!!」
    ファウストの頬が赤みを増す。酒が理由でないことぐらいわかっていた。口をはくはくと開けて、反論しようにもできないようだった。初心な反応にネロは声を上げて笑いだしそうになった。あまりにも可愛らしい態度にネロは気分が良くなる。
    「普段は服で隠れるけど、最初会った時からけっこうでかいなーとは思ってた」
    「初対面で何を思ってるんだ!」
    「いいじゃん、女同士なんだし」
    ネロは自分の胸に手を当てる。小さいわけではないが、大きすぎる訳でもない。しかし、周りを囲む魔女たちが揃って大きいため、小さい分類にされてしまうのは解せなかった。平均よりはある、と自負しているのに。
    「で、どうなの?大きくなった?」
    ファウストは沈黙を貫いていた。しかし、緩くなった思考回路は、普段保っている理性を軽々飛ばさせる。ファウストは小さな声で呟いた。
    「……サイズは、上がった」
    「だと思った!!いやーなんか自分で聞いておいてあれだけど、先生のそういう話は背徳感あるわ」
    「わ、私は君が思うほど純潔じゃない!」
    「知ってるって」
    ネロはゆるく微笑んだ。ファウストが想像よりも生きる力が強く、また面倒みがいい事も知っていた。魔法舎で初めて出会ったというのに、もう長年の付き合いがあるようだった。顔を赤らめながらも、ちびちびとワインを飲むファウストが何だか愛おしく思えて、ネロは手を伸ばした。そして、ファウストの頭を撫でた。柔らかい髪は手触りがよく、しっかりと手入れがされていることが伝わる。ファウストはされるがまま、何も言わなかった。
    「なぁ、先生」
    「気が済んだか?」
    「胸、触っていい?」
    「はぁ?!?!」
    頭を撫でていた手をゆっくりと下に向かわせる。つるりとした頬を撫でて肩に触れる。焦らすように腕を優しく撫で上げる。ファウストが小さく身じろきしたことを見逃さなかった。ネロは意識して甘い声を出す。
    「触ってみたかったんだよね、先生の胸。柔らかそうだし」
    「ネロ」
    「羊飼いくんには触らせてるんでしょ?なら、女同士なんだしよくない?」
    「や、やめ」
    「フォーセタオ・メユーヴァ」
    「アドノポテンスム」
    耳馴染みのある声で聞き覚えのある呪文が聞こえた。ネロとファウストは声のした方へ振り向こうとしたが、突然眠気に襲われ呪文を唱えた相手の元にそれぞれが倒れる。静まった部屋に、小さな寝息が二つ聞こえていた。
    「ったく……もう少し待てよ」
    「すまない。だが、ファウスト様が誰かに触れられるのは我慢ならなかった」
    この場にはネロとファウストの他に、ブラッドリーとレノックスがいた。もちろん、飲み始めた時はいなかった。途中ファウストが大きな声を出した時、防音魔法をかけたつもりだったが二人を呼び寄せる魔法を誤ってかけていたのだ。普段のファウストならそんな間違いはしないだろうが、酒が回っていたことや話の内容から人肌恋しくなったことが原因となったのだろう。
    突然この場に呼ばれたレノックスはすぐにファウストに声をかけようとしたが、状況をいち早く察したブラッドリーによってそれは制された。おまけに認識されない魔法をかけられ、今まで静かに二人の様子を見守っていたのであった。だがその魔法も声や音を立てれば解かれる。レノックスの呪文によって効果が切れ、今に至るのであった。
    ブラッドリーはネロを片腕で抱きながらため息をつく。黄金の瞳は閉ざされ、気持ち良さそうに眠っていた。
    「俺はもっと話が聞きたかったけどな。こいつの本音なんてそうそう聞けるものじゃねぇからな」
    「俺も。ファウスト様がこんな風に思っていたなんて、考えてもいなかった」
    レノックスは優しくファウストを抱きしめた。赤く染まった頬は林檎のようで、食べてしまいたいと思ったがぐっと堪える。己の体にすっぽりと収まるファウストはかわいらしく、庇護欲がそそられた。レノックスの瞳から欲を感じ取ったブラッドリーは再び重たいため息をついた。
    「盛るなら他所でやれ。てか早く部屋に戻れ」
    「そうする」
    レノックスは恭しくファウストを抱えあげる。扉に手をかけようとした時、振り返った。ブラッドリーはネロの頬を軽い力で叩いていた。起こすつもりなのだろう。
    「ブラッドリー」
    「あ?」
    「ありがとう」
    「はぁ?感謝されることなんてねぇよ」
    「もう夜も遅い。程々に」
    「お前もな」
    ブラッドリーは早く立ち去れの意味を込めて手を振る。レノックスはそれ以上は何も言わずにネロの部屋をあとにした。ファウストを抱え直し、どちらの部屋に行くか迷った末、自身の部屋に連れていくことにした。なんとなく、自分のテリトリーの中に入れておきたかった。
    「ん、れの……」
    小さな甘い声が耳に届く。レノックスは優しくファウストの顔を覗きこんだが、瞳はまだ閉ざされていた。寝言だろう。それかぼんやりとした中でも自分を感知しているのだろうか。レノックスは優しく微笑んだ。
    部屋に着いたらどうしようか。気持ち良さそうに眠っているためこのまま寝かしておきたいが、どうせなら起こして色々聞いてみたいこともある。あと何よりも、愛の言葉を沢山伝えたかった。レノックスがどれだけファウストのことを考えているのか。どれだけ自分の欲望を隠しているのか。レノックスの足取りは少しだけ軽やかだった。

    Fin.
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    遥姫*はるき

    DOODLE恋に落ちるのは一瞬
    ※学パロです。notフォル学のつもり
    しゅんかん【ネロファウ♀】しゅんかん【ネロファウ♀】

    ※学パロ。(notフォル学)
    ※ファウストにょた化

    ファウストは悩んでいた。
    その店は通学路にある人気なカフェであった。通る度に、待ち人はおらずとも窓から見える店内は賑わっていた。ファウストも何度か利用したことがあり、店内はほぼ満席であるにもかかわらず落ち着いていて、上品なBGMが時間の流れをゆったりさせていた。静か過ぎず、騒がし過ぎない空間がファウストに合っていた。
    そんなカフェが最近、ネコをイメージした限定メニューを出したのだ。もちろん、ファウストは可愛らしいラテアートからケーキまで一通り食べたが、一つだけ食べていないものがある。それが、この看板にあるパフェであった。三毛猫模様のアイスにはネコの顔が書いてあり、肉球型のチョコレートやしっぽをイメージしたクッキーなど、まさにネコ尽くしの一品だ。是非ともこれを食べたい、と思っていたが問題がある。このメニューは些か一人前としては多すぎるのだ。一人でぺろりと食べ切る者もいるだろうが、食が細いファウストでは食べ切ることは至難の業だ。友人を連れてきてもよかったが、生憎日程が合わずだらだらと予定が流れ、本日が最終日となってしまった。そのため、ファウストはずっと店の前で悩んでいた。
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