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    供養してたやつ、また追加したけど、無理だった

    勧誘勧誘


    「ねえ、アベンジャーズにアイアンマンは勧誘しないの?」
    「検討はしたことあるけど、判定は不合格」

    ナターシャさんがそう言うとカレン─僕が作った人工知能─がひとつのファイルを表示させた。アイアンマンの能力や、アイアンマンの作り主兼操縦者でもあるトニースタークのデータが載せられている。その下には人格評価が『衝動性あり、自己破壊傾向あり、典型的なナルシスト』とあり、判定は不合格と記載されていた。

    「協調性がない人をチームに入れるのは難しい。それに今のチームでも十分やっていけると僕は思う」
    「でもすごく優しかったよ?危ないところを助けてくれたし、そのまま一緒に戦ったし、怪我してる僕をすごく心配してくれたし、その後にバーガーも奢ってくれた」

    スタークさんはすごく賢いから人が言われて嬉しいことも嫌なことも分かった上で、嫌いな人に嫌味を言っているようだから協調性がないわけではないと思う。少なくとも億万長者だとしても私財を使って積極的に人助けをしている人が悪い人なわけない。

    「餌付けされるにしてもチョロすぎるだろ」
    「それだけじゃないよ!話もすごく面白かったの!」
    「例えば?」
    「教えてあげない」

    クリントさんにはいつもイジメられてばかりなので、仕返しの気持ちで少しいたずらっぽく答えたらデコピンされた。ひどい。そんな僕らを見てふっとナターシャさんは笑った。

    「勧誘しようとするのはいいけど、前に断られたことだけは伝えておいてあげるわ」
    「フューリーが言ったからでしょ?誰だって断るでしょ。僕が頼めばオッケーしてくれるよ、たぶん!」
    「どうだか」
    「楽しみにしてて!」

    翌日、僕は意気揚々と彼の元までスイングしてアベンジャーズへの勧誘を行った。メリットもデメリットもきちんと説明した上で、雑談も交えて、彼と少し仲良くなれた気はしたけど結果は惨敗。
    今日も変わらず自然とリビングに集っているチームメンバーのもとにトボトボと向かった。

    「…………スタークさん、オッケーしてくれなかった」
    「でしょうね」
    「AIたちとはすごく仲良しなのに、僕はチームに向いてないからってさ……なにが嫌なのかな……」

    今日改めて彼と話してみて、彼はすごくお喋りだと気づいた。話がうまいから退屈もしないし、とても楽しい時間を過ごせた。きっと対人関係を築こうと思えばすぐに出来るのに彼はやらない。その理由を話してくれることがあれば、アプローチの方法も考えられるんだけどな。

    「でも好きなときに遊びに来ていいって言われたから、明日も勧誘してくるよ!」
    「そんなに入れたいの?」
    「あんな天才を入れない理由がないでしょ」
    「それだけ?」
    「…ッ…………」
    「見る目ないな」
    「全くね」
    「もー!いいでしょ!!」

    直接からかってくるナターシャさんやクリントさんはともかく、黙ってニコニコと見守ってくるメンバーの視線に耐えられなくて、僕は顔を真っ赤にしながら僕は自分の部屋に戻った。
    何を隠そう、僕はスタークさんが好きだ。アイアンマンのことは前から強くてカッコよくて好きだったけど、スタークさん自身に惚れたのはつい先日に彼に助けられたときだ。コレが一目惚れかとすぐにわかった。実際にはスタークさんの姿はテレビや雑誌で何回も見たことあるけど、実物は初めてだったから一目惚れに該当するだろう。本当にめっちゃくちゃカッコよかった。あといい匂いもした。

    「………あッ!明日は何着ていこう!?」

    そう思い立ってクローゼットを片っ端からひっくり返してみたがヤバイ。服が無い。
    こういうときは親友に相談するのが一番だと経験則からわかっている。電話をかけると彼らはすぐに電話に出てくれた。

    「助けて〜……」
    「今日は何?」
    「服が無い」
    「服はあるだろ。いま全裸なの?」
    「そんなわけないだろ。服はあるけど着たい服がないんだよ!」
    「買いにいけばいいじゃん。ハイ解決」
    「さすがMJ、分かってる!買い物に一緒に来て欲しくて電話したの!……明日の朝って空いてる?」
    「えー……朝……?休日の朝の大切さって知ってる?」
    「お願い!!」
    「理由よる」
    「……好きな人と、会うから」
    「マジで!?!」
    「誰???」
    「………………スタークさん」
    「想像の百万倍ビッグだった」
    「そりゃ一人で決められないわ」

    そう言って親友らは僕の頼みを聞いてくれた。約束を取り付けて待ち合わせ場所と時間を決めたところで通話を切った。やはり持つべきものは親友だ。
    結局、翌日は朝からたくさんの服を買った。今までに買ったことのないような系統の服も買ってみた。それも全部アベンジャーズとして働いて稼いだお金で買ったのでなんとなく自信が湧いてくる。
    そのうちの一つを着て、僕はスタークさんに会いに行った。

    「こんにちは」
    「ああ。…今日はデート帰りか?」
    「え?」
    「少し雰囲気が違うから」
    「似合ってますか…?」
    「似合ってるよ」

    僕はヨッシャ!と心の中でガッツポーズをとった。すごく嬉しい。この言葉を聞くために今日は半日、苦手な服屋さんを巡ってきたのだ。

    「まあ君は素材がいいから何でも似合うだろ」
    「そんなのスタークさんこそ!今のスーツ姿もすごくカッコイイし、ジャケットを脱いだあとのちょっとラフなところも様になるし、Tシャツとかパーカーみたいなゆるい服装もオンオフの切り替えの感じがなんかときめくし、普段とのギャップがめちゃくちゃ好きです!!」
    「……ありがとう」

    喋りすぎてしまったと後悔していたが、スタークさんを見てみると照れ臭そうにはにかんでいたので伝えてよかったなと心の底から思った。

    「さて。それじゃあ科学の話でもしようか?」
    「お願いします!」
    「昨日送ってくれたカレンのデータは全部見た。いくつか修正点はあるがなかなか良くできてると思うよ」
    「良かった!でも、もう少しできることを増やして行きたくて……」

    そのまま僕はスタークさんとカレンの改良の話からスーツの改良の話までたくさんの話し合いをした。彼の専門分野でない部分の僕の質問にもスラスラと答えていく姿は本当に本当にカッコよかった。
    集中していると時間はあっという間にすぎるもので、昼過ぎに来たはずなのに気づいたときにはすでに太陽が沈んでいた。

    『ボス、そろそろ切り上げないと会食に間に合いませんよ』
    「…あー」
    『それにピーターもパトロールの時間では?』
    「…あー」

    ジャービスの言葉に自然と似たような反応をしてしまい、目を合わせながらくすりと笑い合った。スタークさんにとってもこの時間が有意義なものだったなら嬉しいな。

    「ピーターは明日も空いてるか?」
    「僕はいつでも暇ですよ。何か起こらない限りは」
    「ジャービス、僕のスケジュールは?」
    『明後日から海外出張なこともあり、予定は午前に会議が一つあるだけです』
    「キャンセル」
    『無理です。国務長官が収集している重要会議には出ていただかないと』
    「あ、それ僕も行くやつだ。忘れてた」
    「君も?」
    「実はアベンジャーズなので!」
    「そういえばそうだったな。………冗談だよ」

    そう言われてわざとらしく唇を尖らせながらムスッと拗ねた顔をしてみると、スタークさんは頭をポンポンと撫でながらごめんと優しく謝ってくれた。

    「会議が終わったらご飯でも食べて、その後にまたココに来よう」
    「最高の計画だ」
    「明日にはある程度の形にしたいからな」
    「家でも考えてくるね」
    「ああ、僕も考えておく。……玄関まで送るよ」
    「ありがとう。でもココの窓をちょっとだけ開けてくれたら十分だよ」
    「まさか?」
    「今からパトロールするからね。スーツに着替えたら飛び降りるよ!」

    僕はそそくさと服を脱いで、つい先程まで改良を加えていたスーツを身に着けて、忘れ物がないかを確認してから窓のそばまで向かった。

    「……ピーター、スーツはいつもそうやって着替えてるのか……?」
    「はい、そうですけど……?」
    「……そうか…………いや、なんでもない」
    「そうですか?…今日はありがとうございました!また明日ね!」
    「ああ、また明日」

    窓から飛び出したら僕は親愛なる隣人のスパイダーマンだ。ニューヨークで一番高いビルから飛び降りるこのスリリングさにテンションが上がって思わず叫び声をあげてしまう。地面が近くなってきたら飛ばした糸にぶら下がって、落下の勢いのままにくるりと宙返りをしながら僕は助けを求める人のもとへと向かった。


    ーー



    「ピーター、用意できた?」
    「ネクタイがキレイに着けられない……!」
    「そのまま行ったら?」
    「嫌だよ!助けてキャプテン……」
    「ちょっとしゃがんでくれる?」

    最後は後ろからキャプテンにギュッとネクタイを仕上げてもらえば、今日は完璧なよそ行きコーデだ。ちゃんとした格好をすれば僕も良いところ育ちにも見えてくる。
    車に乗り込んで会議が行われるビルの前で車から降りると、後ろの車も同じビルの前で止まり、中からスタークさんが降りてきた。今日も今日とてカッコイイ。
    ぱちりと目があって彼の方から手を振られたので、手を振り返しながら早歩きで彼の方に向かった。

    「スタークさん、おはようございます!」
    「おはよう、ピート。君は今からプロムにでも行くのか?」
    「もう!違いますよ!高校は去年卒業したの!」
    「似合ってるってことだよ」

    そう言いながらスタークさんは僕の肩を抱きながら額にキスを落とした。触れられたところにじわじわと熱が集まってくる。そんな僕の気も知らない彼は肩を抱いたまま、会議室まで僕をエスコートしてくれた。

    「席は自由?」
    「いいや、君は僕の隣だ」
    「いいの!?」
    「むしろ君以外お断りだ。例えば僕を騙したうえに不合格としてきた女スパイとか」
    「あら?騙される方が悪いんじゃない?」
    「もー、仲良くして!」

    スタークさんもアベンジャーズに入る気がないし、ナターシャさんも入れる気がないから、二人とも普段よりちょっと口が悪い。この溝を埋めないとスタークさんをアベンジャーズに勧誘できないのか。思っていたよりも難しそうで俄然やる気が出てくる。
    全員が席に座ると、ちょうどドアが開いて、国務長官と他にも多分偉い人たちが数人入ってきてそれぞれが席に着く。それだけで少し空気がピリついて自然と背筋がぐっと伸びた。

    「今日集まってもらったのは君たちの活動についての話があるからだ」
    「だろうな」

    隣でスタークさんが小声で呟いた言葉に内心で同意しながら彼の横顔を見つめていると視線に気づいた彼がこちらを見てふわりと微笑んだ。その笑顔は反則だと思う。見惚れて何も言えなくなる前に慌てて目を逸らすと、スタークさんが僕の頬を突く。

    「……そこ、イチャつかないで」
    「つまらん話はちゃんと聞いてる。続けてくれ」

    イチャついてることは否定しないんだ…と心拍数が上がるのを感じながら、目の前のスーツの人たちの話に耳を傾けた。

    「前提として私達は君たちのヒーロー活動に非常に感謝している。しかし、世間の声の中には君らを自警団と呼ぶものも多くいることは事実だ」
    「アベンジャーズは政府組織の一部では?」
    「アメリカ政府の管理下とは言われているが、実際のところ管理できているかはわからない。現にアメリカ政府は君たち全員を抑制する力を持っていない」

    さすがに軍人さんや戦車なんかと戦いたくないし、実際問題として抑制する力はなくないと思うけど、それだけ恐怖心を政府はもっているということだろう。

    「私達が世界の脅威になりうると?」
    「端的に言えばそういうことだ。君たち以外にも超人や、超人相応の技術や装備を所持する者が世界中で急増していることは感じているだろう?今後も増加していくことが予測されるが、全てが善人である保証はどこにもない」
    「ええ、まあ…それは確かに……」

    SNSの普及などで個人から情報発信されることも増えて認知がされるようになったこともあるだろうが、超人増加の一番の理由は僕は科学技術の進化が著しいからだと思っている。実際に僕も科学技術の進化で生まれた蜘蛛に噛まれてスパイダーマンになった。
    閑話休題。ともかくパワーを持つ人間が増加しているのは事実だし、超人関連の事件が増加していることもまた紛れもない事実である。

    「そこで超人のためにも一般市民のためにも、国連委員会を主体として該当者には協定にサインしてもらい、今後は委員会の認可のあった場合のみ、パワーや装備の使用を認可し、ヒーローとして活動してもらおうと考えている」
    「認可はどういった時に出るんですか?」
    「今もまだ話し合い段階ではあるが、大規模災害や、宇宙からの侵略などでは即認可するつもりだ」

    そんなの認可が出なくても、考える前に身体が動いてしまうだろう。そんな時にしか認可されないのだろうか?それともまだ何も話を詰めていないだけ?目の前で誰かが傷つきそうになっているのを止めるのすらダメなのか?超人であるからという理由で?
    グルグルと答えの出ない質問がたくさん頭の中をかけめぐる。考えていても仕方がない。僕は手をあげて直接彼らに質問することにした。

    「……僕が、スパイダーマンがしてる活動はどうなりますか?」
    「おそらく規制対象になる」
    「目の前で事件が起きていても無視しろって事ですか?」
    「認可を要請してくれ」
    「要請から承認までの時間は?」
    「五分ぐらいを想定している」
    「その間に怪我人が出たら?人が死んだらどうするんですか?」

    一般人でもほんの数分で人の命を奪えてしまうことは目の前で経験しているから、つい言葉に力が入ってしまった。しかしコレは協定を結ぶ前から明確にしなければならない問題だと思う。
    何かを相談したあとにひとりが口を開いた。

    「…それは、国連の責任として誠意を持った対応を取るつもりだ」
    「人の命は、戻らないよ」
    「ピーターの言うとおりだ。全く、くだらん協定にサインする気が無くなった。ピーター、美味しい店を予約してるからさっさと行こう」
    「なっ……くだらないとは……!」
    「くだらないだろ。第一に派手なレオタードを着て、ニューヨークを飛び回って、道案内をしたり猫を高い木から下ろしてあげることを規制する意味があるか?超人じゃなくても出来る。というか、元は警察やら消防やらの仕事だろ?ピーターは忙しい彼らには手が回らないところの仕事をしてるんだ。役所がもっと働いた時にはスパイダーマンも協定にサインして早期に引退できるかもな」
    「…彼の活動はひったくりや強盗の逮捕にも関与が認められているが?」
    「言っておくがピーターは糸で捕まえて警察に引き渡しているだけだぞ。それに銃を持った複数人を相手に死傷者を出さず解決できることに何の文句がある?何が『関与』だ。貢献と言え」

    僕が椅子ごとスタークさんに押されるがままになっていると、いつのまにか扉の真ん前まで連れて来られていた。このままスタークさんに謝って席に戻るという選択肢もあるけど、スタークさんだけ悪役になってほしくないし、なにより言っていることは僕も賛同できたから僕もこの場を去ろうと決めた。

    「それじゃあお先に」
    「失礼します……!」

    会議室を出ると、僕が途中で抜け出すとは思っていなかったらしいスタークさんが笑った。

    「良い子の君も抜けるなんて、そんなにお腹空いてたのか?」
    「違うよ。あなたの言ってることに賛同できたから」
    「……よし、今日はせっかくスーツだからいい店に行こう」

    スタークさんに手を取られ、車に乗り込み、気づいたら僕は高そうなレストランの真ん前にいた。お城みたいなラグジュアリーな装飾に、僕は思わず固まってしまった。

    「…………こんなとこ、来たことない」
    「君の"初めて"を僕が貰えるわけだ?光栄だな」

    そんな僕の背中を押しながら、スタークさんは慣れた様子で店内に入る。店員さんの案内で窓際のキレイな景色が一望できる個室に着くと、僕はメニューを見て、自分の目が点になるのを感じた。

    「…………ねえ、スタークさん……メニューの意味が分かんないんだけど……」
    「僕もほとんど分かってないよ。苦手なものはある?」
    「…クセのある野菜とか苦味が強いものはあんまり」
    「肉派?魚派?」
    「お肉」
    「わかった」

    そう言うとスタークさんは呼び出しベルを鳴らして、ウェイターさんに僕の答えをそのまま伝え、談笑しながらウェイターさんのオススメを注文した。わからないと僕に寄り添ってくれながら颯爽と注文を済ませる姿にまたキュンとトキメイてしまった。

    しばらくして運ばれてきた料理はどれもこれも美味しくて、高級感あふれる見た目も、舌が蕩けるような食感も、全てが素晴らしかった。

    「ところで、ピーターはいつも何してる?」
    「普通だよ」
    「朝から夜まで会議に会議に会食ってことか?」
    「何にもしてないってこと」
    「それは丁度いい。明日から海外出張って言っただろ?君も一緒に来ないか?」
    「えっ?」
    「ドイツはビールもつまみも美味いぞ。言っておくが、からかってるわけじゃないからな?ドイツは合法的に君も酒が飲める」

    突然の誘いに驚いたものの、考えてみればスタークさんと一緒に過ごせるなら願ったり叶ったりだった。 

    「誘いは嬉しいけど、なんで僕なの?」
    「可愛い子には旅をさせよってことわざがあるだろ?僕の知っている可愛い子は君ぐらいだから」
    「……スタークさんって、ズルいことばっかり言いますよね」
    「ズルいこと?」
    「すぐに僕が特別みたいな言い方するから………勘違いしそうになる……」
    「君は特別だよ。スパイダーマンとしても、ひとりの男としてね」

    その言葉に胸が高鳴った。頬杖をつきながらこちらを見つめてくるスタークさんに見惚れてしまい、顔が熱くなるのを感じる。

    「…………そ、それって……どういう意味ですか……?」
    「そのままの意味で受け取ってくれて構わないよ。ピーターはどう思ってるんだ?僕のこと」

    スタークさんはカッコよくて、頼りになって、頭が良くて、優しくて、ユーモアがあって、紳士的で、話していて楽しい人だ。でもそれだけじゃなくて、たまに見せる子供っぽいところが可愛くて、でもすぐ拗ねる面倒臭いところもあって、そして、何よりとても優しい人だ。
    僕はぎゅっと握りこぶしを作って、彼への気持ちを伝えることにした。

    「…………好きです……」

    言ってしまった。もう後戻りはできない。スタークさんの顔を見ることができず、俯きながらギュッと目を瞑っていると、大きな手が僕の手を握った。

    「僕も、ピーターが好きだよ」

    スタークさんの声に目を開けると、彼は見たこともないくらいに幸せそうな笑顔を浮かべていた。

    「……スタークさん……!」
    「おいおい、泣くなよ」
    「だって……嬉しくて……」

    席を立って泣き笑いする僕を抱きしめてくれたスタークさんに身を委ねると、ふわりと香水の良い匂いが鼻腔をくすぐる。こんなに幸せなことがあるなんて、知らなかった。

    「……ねえ、アベンジャーズに入ってくれる?」
    「うーん、それはなぁ…」
    「一緒にいたい…」
    「それは、魅力的なお誘いだな」
    「じゃあ入ってください!」
    「……………ほら、デザートが来たぞ」
    「…スタークさんの意地悪」
    「ごめんな」

    そう言って頭を撫でてくれるスタークさんはやっぱりずるいと思った。
    デザートを食べ、お店を後にすると携帯にはアベンジャーズの面々から無数の着信が届いていた。それはスタークさんも同じだったようでため息をついていた。

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