クリアリ1温かいお天道様がのどかな風景を明るく照らしているその中に
とても立派なお城が建っていました。
そしてそのお城の前に馬車が止まりました。
まもなく聖職者の格好をした男性と幼い男の子が一人馬車から降りました。
「クリフト、長旅で疲れただろう。」と幼い男の子に声をかけると
クリフトと呼ばれた男の子は笑顔で
「いいえ、しさいさま。ぼくはだいじょうぶです。」
と答えました。
司祭様はまだ小さい少年が大人に気を使うのをみて申し訳ない気持ちになりつつ
「あとは国王様と王妃様に挨拶しなければならないから、もう少しだけ頑張ってくれ」
とクリフトに言いました。
お城につくまでの長い、長い庭園を歩いてる途中
オレンジ色でくせっ毛の髪の女の子がどろんこになって遊んでいました。
素敵なドレスはどろんこまみれです。
そしてその姿を微笑ましく、同じくオレンジ色の髪をした背の高い女の人が微笑んで見ていました。
クリフトはその姿にあっけに取られていましたが
その女の子と目が合うと、その女の子が近寄ってきました。
女の子はクリフトに向かって「あなただぁれ?」と聞いてきました。
クリフトは「クリフトだよ」と答えると
司祭様は慌てて「クリフト、こちらの方は王女様にあらせられるのだから、口の聞き方に気をつけなさい」とたしなめられてしまいました。
クリフトは「おうじょさまってなんだろう?」と思いながらも友達に話すように話してはいけないんだなぁと言うのは察したようで
「ごめんなさい」と答えました。
すると
「まだ来たばかりで分からないわよね」
と背の高い女の人が言いました。
司祭様は「これは王妃様」と頭を下げました。
王妃様は「司祭殿、頭を上げてちょうだい」と言ったあと
クリフトの目線に合わせて
「まぁ、貴方がクリフトね」と言って
クリフトをだっこしました。
女王様は「可愛なぁ。男の子は女の子と違った可愛さがあるわよね」といってクリフトを放そうとしません。
クリフトは突然のことに驚き、声がでませんでした。
抱っこされてるクリフトをみて
どろんこまみれの女の子は「ママ、アイーナも」といい
クリフトを下ろすと女の子を抱っこして
「アリーナも可愛いわよ」
とアリーナを抱っこしました。
クリフトは抱っこされるのはとても久しぶりでした。
というのも、つい最近クリフトのパパとママは病気でお星さまになったのでした。
ひとりぼっちになったクリフトは「これからは私と一緒に暮らすんだよ」と親戚の司祭様に言われて、ここサントハイム城にやってきたのでした。
王女様は太陽のようにポカポカ温かくて
クリフトのママと同じ香りがしました。
気がついたらクリフトの目から涙がポロポロ溢れていました。
それに気がついた王妃様はアリーナを下すと
クリフトの頭を優しく撫でました。
そして女王様は「よしよし、寂しかったね」と言って
細くて長い腕を小さいクリフトの背中に回しました。
クリフトはわんわん「ママ、パパ、なんでいないの?」と泣いていました。
女王様は背中をポン、ポンと優しくクリフトが泣き止むまで背中をたたいていました。
ようやくクリフトが泣き止むとにっこりと王女様は笑い、クリフトの頭を撫でました。
すると静かに見ていたアリーナは王女のと同じことをしたくなったのでしょう。
「くいふと、いいこ」と言いながら、どろんこの手でクリフトの頭を撫でました。
どろんこの手で触ったので、クリフトの髪はどろんこがつきました。
「まぁ」と女王様
「おや」と司祭様
が同時に声が出てクスクスわらいました。
アリーナも笑いました。
3人を見てクリフトも笑いました。
その日クリフトは久しぶりに笑いました。
王様に挨拶しなくてはいけないのに、気がつけば4人の服には泥だらけに。
そしてお天道様はアリーナと同じオレンジ色になっていました。
おしまい。