覆い隠せぬあぐ。
口を開いた。
唇の端がひきつる感じがする。
気をつけないと、舌が口からはみ出してしまう。
「いいよ。おいで」
ドラ公の声は落ち着いている。
短い言葉。
それでも、俺を許してくれる言葉。
表情は見えない。
俺は下を向いてる。
ドラ公の首元だけを見つめている。
いや、本当は顔を見るのが怖いんだ。
俺ばかり緊張して、ドラ公がなんでもない顔をしているのが。
だから俺は俺に許された分のご褒美をもらうことに集中した。
吸対のジャケット。
ダブルのボタンを上からみっつ。
ネクタイは取ってくれた。
シャツのボタンは、上からふたつだけ。
誰も見たことがない、ドラ公の制服の内側。
こうして、仕事中のドラ公は、俺が「いいこと」をしたときだけ、誰にも見えない所でご褒美をくれる。
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