夏来自覚後さより自覚前の話大2の春3月くらいのお話です。
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(さわちゃん家で宅飲みのマブダチ三人組、酔っ払うとさらに無口&ぼんやり顔になるさより。)
さより「………」
夏来「さより〜〜、、あぁこりゃ完全に落ちたな」
さわ「ぽいね、、夏来くん駅近いでしょ?送ってあげてくれない?」
「はいよ〜、じゃお疲れ〜(さよりの腕掴みながら)」
「おつかれー!ありがとね!」
帰り道。
「さよりー、せめて自分の脚で歩けよー」
「…ん………」
(…ちっか……)
鼻息がかかるくらいの距離。…まつ毛なが。
さよりの最寄り駅までと思ったが、さよりが自分の脚で帰れるとは到底思えなかったので、さよりの家まで送ることにした。
さよ母「あ〜夏来くん、ごめんね、ありがとねぇ」
「いえいえ、最寄り近いんで。」
「ごめんね、今腰が悪くて…緋色も寝ちゃってるから、部屋まで連れてってもらえる?」
「あ、はい。じゃ、失礼します」
相変わらずの柏木家の匂い。…さよりの匂い。
2階に上がって、さよりの部屋に入る。立ち込めた匂いと生活感に心臓が高鳴る。何今更緊張してんだ、何回も来てるだろうが…。
そのままさよりの春物の薄手のコートを脱がし、ベッドに横たわらせ、布団をかける。さっきまでは辛うじて起きていたさよりだが、もう既に眠りについたようだ。
真っ暗な部屋に、月明かりの青白い光が窓から差し込んでいる。当のさよりは酒臭いのに、甘酸っぱい匂いがして、、変な気分になる。
「さより」
名前を呼んでみても、彼女は目を覚まさない。
「かしわもちお食べ〜…」
彼女の好きな食べ物の名前を口にしても全く動じないので、ちょっと面白い。
…時計の秒針音と、さよりの寝息だけが部屋に広がっている。
ふと、彼女の少し開いた口元が目に留まった。
唇は、木下から貰ったと喜んでいた口紅の色に、紅く染められている。
…その鮮やかさに吸い寄せられるように、俺の、唇は、
…
「ごめんねぇお茶もお出しせずに。いつもありがとうね。」
その時、突然さよりの母が部屋に入ってきた。俺は咄嗟にさよりから離れ、さより母との会話を続けた。
「あぁ、い、いえ、大したこと…」
「この子ね、夏来くんと遊びに行った日には必ず嬉しそうに帰ってくるのよ。あんまり顔に出さない子だけど、分かるの。雰囲気が、とても温かくなってるのを感じる。」
「………」
(そう、なんだ…)
俺はチラッと彼女の寝顔を見た。そしてさっきのことを思い出し、顔が熱くなるのを感じた。
「あ、あの、俺、帰ります。そろそろ。」
「えっ、あぁそうね、夜遅いものね。」
「や、あの……はい。」
「?」
「あの本当に…すみませんでした……」
「え、何が、、、」
「失礼します」
そのままさよりの家を後にした。
顔を真っ赤にして帰ってきた俺をみて、秋は驚くと共に、何かを察したらしい。
秋「…お疲れ」
夏来「……………なんでまだ起きてんだよ」
秋「はいはい、おやすみー」
その後すぐに布団に入ったが、到底眠れるはずがなかった。