夜も更けた頃、団長室で二人で飲んでいた時だった。右手にはグラスを、左ひじはソファーに預けてほろ酔い気分に浸っていたハンジは、今思いついたかのように話を切り出した。
「そういえばさあ、ウォール・マリア作戦の時の報告書」
リヴァイはテーブルを挟んで向かい側に座っていた。せこせこしたハンジの飲み方と違って、リヴァイはゆったりと飲み干すが、何杯飲んでも彼の顔色は変わらなかった。
黙々とグラスを口に運んでいた彼の手が止まった。
「あれでよく通ったなっていうのは自分でも思っててさ。ピクシス司令やザックレー総統が相当口をきいてくれたみたいなんだよね」
リヴァイはグラスの中身をじっと見つめている。その顔には相変わらず、変化の色はない。そんなに覗いても映るのは自分だけだろうに、とハンジは思った。彼は琥珀色の液体の中に、何を探しているのだろうか。
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