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    soy_uraaka

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    soy_uraaka

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    不思議なお花の効果でショタ化してしまったリュゾーがジン殿に今一度問うているお話。

    花の悪戯「もし俺が元に戻ったらどうする?」
    人里離れたあばら家で、囲炉裏の炭をいじりながら竜三は言った。
    火箸を扱う手は仁よりもふたまわりほど小さい。
    答えを急く声色は、声変わりをする前の童そのものだった。

    半月ほど前。隠れ家へ帰ると、いつもはいるはずの竜三の姿がなかった。
    さほど広くないあばら家な上、竜三ほどの体格のよい男がいればひと目で分かるはずだ。
    「竜三、おらぬのか?」
    案の定、返事はない。
    おおかた、どこかへ出かけたのだろう。
    武具を下ろそうとしたその時、奥の収納箱から微かに音がした。
    まさか狐が迷い込んできてしまったのだろうか。
    早々に出してやろう、と蓋を開けた。

    中には狐ではなく、一人の男子が入っていた。
    細い髪には、ところどころ黄色い花弁のようなものが絡まっている。
    童はひどく怯えた様子で「仁…」と己の名を呼ぶ。
    なぜ俺の名を知っているのか。そう問おうとした瞬間、仁は気づいた。この童に、見覚えがあることに。
    記憶の奥底から蘇るは、幼少期を共に過ごした、我が友の姿であった。

    竜三によれば、隠れ家へと向かう途中、蒙古兵に襲われたらしい。
    数は三。竜三ほどの腕があれば、容易く討ち倒せる数だった。刃向かう剣兵を受け流し、素早く一太刀。間髪入れず、もう一人の槍兵を斬り伏せた。
    数の多い自分達が有利だと思っていたのだろう。最後の一人は腰を抜かしてしまっていた。
    戦いは、後腐れがないほうがいい。
    いつの間にかどこぞの冥人と考えが似てしまったな、などと心の中で笑いながら、太刀を振り下ろそうとした。
    刹那、懐から出した袋を、突然顔面にぶつけてきた。
    「っ!ぐ…っ」
    目に強烈な痛みが走る。思い切り吸ってしまい、しばらくむせてしまった。
    畜生、目くらましか。あいつら、毒だけではなく暗具も取り入れやがったな。
    やがて咳が落ち着き、目を開けるようになってきた。あの腰抜けは、とっくに逃げたらしい。
    なら長居は無用だ。とっとと仁の元に帰らねば。
    そう思い立ち上がった瞬間、妙に目線が低いことに気づいた。腰までしかなかったはずの芒は、今は顔を出すのがやっとだ。
    まさか。そんな作り話のようなことがあってたまるか。
    竜三は着物と武具を重そうに引きずりながら、近くにあった水溜まりを覗いた。

    そこには、幼き頃の自分の姿が映っていた。

    というのが、いきさつらしい。
    にわかに信じがたいが、抱えていた所持品やハーン達との戦、菅笠衆…我が友にしか分からないような記憶を持っていることから、この童は竜三だと信じざるを得なかったのだ。
    こう言ってはなんだが、殺されずにすんでよかった。もし致死性の毒であれば、死んでしまっていたかもしれない。もしくは、帰路の途中で襲われて。

    『こんな体じゃ、太刀も振るえねぇ…。』

    あの日、震え泣く竜三をなだめている時、彼は弱々しく呟いた。
    童となってしまった今、太刀はおろか、戦うことすら出来ないだろう。
    刀は彼にとってとても大きな存在だ。
    幼き頃より武術に触れていたのだ。その姿をいちばん近くで見ていた俺は、痛いほどよく分かる。
    俺も、己から戦いを無くしてしまったら、何が残るのだろうか。想像しただけで、手が震える。
    このまま放っておくわけにはいかない。
    悲しむ友のためにも、早く元に戻す術を見つけねば。

    「なぁ、どうなのだ?」
    友の声と、火が爆ぜる音で覚醒をする。
    細かく崩された炭が煌々と燃え、竜三の大きな瞳を鈍く照らした。赤い瞳で、俺を見据える。

    「どうもなにも…俺はむしろ、戻ってほしいと思っておる。」
    「本当か?戻ってしまえば、太刀を握れる。」

    ざぐり、と火箸で大きな炭を崩した。

    「再びお前を裏切り、殺してしまうかもしれねぇぞ?」
    「……。」
    「一度は思ったのではないか?童のままでいれば、お前にしか頼れないのではないかと。」

    微かに眉尻が動く。
    図星であった。わずかだが、この姿であれば、ずっと手元に置いておくことができるのではないか、と。
    太刀も握れず、馬にも乗れない。外を歩けば、たちまち蒙古や賊の標的にされる。
    そうなれば、必然的に俺に守られる形になるのだ。逃げる隙などない。頼れる者は、俺一人のみ。
    だがー

    「…愚問だ。お前が望む限り、元に戻す術を探す。」
    「裏切るかもしれねぇぞ。」
    「裏切らぬであろう。お前は。」

    ぱちり。火がまた爆ぜる。

    「俺は『お前』が好きなのだ、竜三。お前が望む形で、同じ時を過ごしたいのだ。」

    竜三の丸い頬に手を添える。柔らかくて、壊れてしまいそうだ。
    互いに見つめ合ったあと、竜三は大きな溜め息をついた。

    「ほんっとお前って、そういう所があるよな。」

    不機嫌そうに火箸を投げる。立ち上がり、寝床へと向かっていった。

    「全く…お前と話すと、首が痛い。」
    「いきなりなんだ。」
    「早くお前と、同じ目線で話したいものだ。」

    それは、どういう意味なのか。
    問いただそうとするも、早々に布団に入っていってしまった。
    竜三…お前は、本当に。

    「…早く、方法を見つけねばな。」
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