それは〇〇の匂い? そっと掴まれた手に感じる温もり。
骨ばった男の指先が、生白い自分の手の甲とそして第二関節の深い皺の間と一本一本丁寧に撫ぜていく。
もし組の者たちがいまの自分たち二人を見たら一体あの二人は何をやっているんだ、とさぞ訝しむ事だろう。
好みの女ならばいざ知らず、相手は男。それがどこの者とも知れぬ男だったならば、当然こんな風に好きなように触らせてなどいない。即座に相手の股間を蹴り上げていたに違いなかった。
だが、いま自分のこの手を包み込んでいる人間は密かに好意を寄せている――男だ。
(桐生ちゃんの手ぇあったかいなぁ…)
この歳ともなれば誰かの肌に直接触れることなど、決まった相手でもいなければそうそう無い。
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