お題「ちょっと黙って」「あっ!ほら、翠くんっ、ゆるキャラ!ゆるキャラがテレビに出てるッスよ!」
そう言いながら、座ったままずりずりと後ずさるてとらくんに、俺は腹の底をじり、と焦がした。
「知ってる。録画してるし」
床に置かれた彼の手を、紙をくしゃりと丸めるみたいに少し強引に握れば、指先がぴくりと動くのが掌に伝わる。
「ほ、ほら、そろそろお腹も空く頃だし!ね!」
「そうだね、空いてる」
「そ、そうッスよね!あ、なんか買いに行くッスか?」
「あのさぁ、」
一向に目の合わない彼の視界に無理やり入り込む。いつもは強いはずの、けれども今は少し頼りけのないその橙に俺を映せば、鉄虎くんがごくりと喉を鳴らした。
「ちょっと黙って」
互いの鼻先が擦れる。
沈黙が少し痛いぐらいだった。