お題「救うのは僕じゃない」 いつだって、君の傍には人がいる。
君が俺を頼ることなんか、これから先ずっと、ないんだろうなぁ。
「……って言ってくれたんスよ、大将が」
「へぇ……」
俺は気のない返事をしながら、目の前のストローに口をつける。そして氷で薄くなったジンジャーエールで、無理やり喉を潤した。そうしないと変な事を口走ってしまいそうだったから。
「へぇ、って、伝わらないッスか?その、大将の凄さが」
「いや、伝わってるよ、充分。充分すぎるぐらい……」
ポテトをつまみながら不服の申し立てをする鉄虎くんを宥めるように俺は言った。それからひとつ、静かなため息を漏らす。俺がとてもちっぽけな人間に思えて、惨めだったからだ。
あの人の凄さなんて、今更言われなくたって分かっている。鉄虎くんがどれだけその人を慕っているのかってことだって、そうだ。俺ごときが敵うわけがないのだ。あんな、格好いいという言葉をそのまま形にしたような人になんて。そんなことを考えて、惨めに惨めを上塗りする。図体だけでかいのが恥ずかしいぐらいだった。
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