お題「言い訳はバッチリさ」「み、翠くん!」
放課後。俺たちの教室。
窓際の最後列が、先日の席替えで彼が勝ち取った一等席だ。チャイムが鳴り終えても頬杖をついて外を見つめている翠くんに、俺はぎゅ、と目を瞑ってから深呼吸して声をかけた。
「ん……、あ、鉄虎くん。どうしたの?」
「ええっと……あの……」
“遊園地のペアチケットをもらったんだけど、一緒に行かない?”
もらった、なんていうのは口実で、本当は俺が二枚用意したのだけれど。脳内で何度も繰り返したシミュレーションでは、俺に誘われた翠くんは少し驚いたような顔をして“俺と?”って言うはずなのだ。そうしたら次は“ヒーローショウをやるみたいだから参考に”って俺が答えて、“それなら”って翠くんが言う。口実なんていくらでも用意してきている。忍くんは生徒会で忙しいって言っておいて、なんて気を回してくれていたし(有難いやら気恥ずかしいやら)、ヒーローショウがダメでも、ゆるキャラのショウだってチェック済みで、それで、ええっと。
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