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    ナガヤマ

    主に進捗と尻たたき

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    ナガヤマ

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    みどてと
    お題お借りしています( https://shindanmaker.com/587150 )

    ##みどてと

    お題「言い訳はバッチリさ」「み、翠くん!」
    放課後。俺たちの教室。
    窓際の最後列が、先日の席替えで彼が勝ち取った一等席だ。チャイムが鳴り終えても頬杖をついて外を見つめている翠くんに、俺はぎゅ、と目を瞑ってから深呼吸して声をかけた。
    「ん……、あ、鉄虎くん。どうしたの?」
    「ええっと……あの……」

    “遊園地のペアチケットをもらったんだけど、一緒に行かない?”

    もらった、なんていうのは口実で、本当は俺が二枚用意したのだけれど。脳内で何度も繰り返したシミュレーションでは、俺に誘われた翠くんは少し驚いたような顔をして“俺と?”って言うはずなのだ。そうしたら次は“ヒーローショウをやるみたいだから参考に”って俺が答えて、“それなら”って翠くんが言う。口実なんていくらでも用意してきている。忍くんは生徒会で忙しいって言っておいて、なんて気を回してくれていたし(有難いやら気恥ずかしいやら)、ヒーローショウがダメでも、ゆるキャラのショウだってチェック済みで、それで、ええっと。
    「……鉄虎くん?」
    「お、押忍!?」
    声の裏返った俺の返事に、きょとんとした翠くんが時間差で吹き出す。笑われてしまったことがやけに恥ずかしくて、俺は思わず俯いた。かっこ悪い。
    「どうしたの、言い難いこと?」
    「あ……、いや……」
    「場所変える?」
    「だ、大丈夫ッス、ここで……」
    「……」
    「……」
    クラスメイトの声がくぐもって聞こえて、ただ一人水の中に潜っているみたいだった。鼓膜にはもうずっと自分の心臓の音だけが響いていて、それが余計にこの場から意識を隔離させる。翠くんは不思議そうな顔をしながらずっと俺の言葉を待ってくれていて、その優しさが俺の焦燥をより掻き立てた。
    「……俺、何かしちゃった?」
    いつまでも話を切り出さない俺を前に、翠くんがぼそりと呟いた。俯いたままの俺は彼の表情を確認できなかったけれど、その声色だけで、翠くんの不安を汲み取るのは容易かった。
    どうしよう、そんなんじゃないのに。俺がはっきりしないせいだ。色んなセリフを、考えてきたじゃないか。どれも言い訳じみた格好悪いものばかりだったけれど。
    どれも結局、自分を守るだけの言葉だったけれど。
    「あの……?」
    「翠くん!」
    「は、はいっ!?」
    俺は歯を食いしばって、翠くんの机に両手を叩きつけた。バンッと言う音が教室に響き渡って、それに驚いた翠くんがビクリと肩を揺らして姿勢を正す。クラスメイト達がこちらを見ている気はしたが、そんなことを今は気にしていられない。
    俺は深く息を吐いて翠くんの顔の前に遊園地のチケットを突き出した。
    「俺と遊園地、行くッスよ!」
    「えっ、」
    「二人で!」
    「あ、え?」
    「理由は!ヒーローショウがあるからとか!ゆるキャラのショウがあるからとか!まぁ色々考えてきたんスけど!」
    翠くんが目を白黒させている。ちょっと引いているのかもしれない。だけどやっぱり俺には、回りくどいのは性にあわない。


    「俺が翠くんを好きだからッス!」

    ほらこれだけで、言い訳なんてバッチリだ。
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    izayoi601

    DONE思いついたので一人飯するじょしょどのの話。台詞などでも西涼二直の中ではじょしょどのが一番食事好きな方かなと妄想…脳内で色々分析しながら食べてたら良いです…後半は若も。庶岱と超法前提ですがもし宜しければ。ちなみに去年の流星での超法ネップリと同じ店です。
    早朝、一人飯「これは、まずいな……」
     冷蔵庫の中身が、何も無いとは。すでに正月は過ぎたと言うのに、買い出しもしなかった自らが悪いのも解っている。空のビール缶を転がし、どうも働かない頭を抱えつつダウンを着るしかない。朝焼けの陽が差し込む中、木枯らしが吹き付け腕を押さえた。酒だけで腹は膨れないのだから、仕方無い。何か口に入れたい、開いてる店を探そう。
    「……あ」
    良かった、灯りがある。丁度食べたかったところと暖簾を潜れば、二日酔い気味の耳には活気があり過ぎる店員の声で後退りしかけても空腹には代えがたい。味噌か、塩も捨てがたいな。食券機の前で暫く迷いつつ、何とかボタンを押した。この様な時、一人だと少々困る。何時もならと考えてしまう頭を振り、カウンターへと腰掛けた。意外と人が多いな、初めての店だけれど期待出来そうかな。数分後、湯気を掻き分け置かれた丼に視線を奪われた。
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