かしこいこども「怖いですか」
怖いと言ってくれたらやめてやろうと思っていた。本当だ。
使える駒は立派な駒になるまで丹精込めて育てられるわけだが、それはそれとして、偶発的に生まれたモノでも利用価値があるなら使わない手はない。
出会った時分より必要以上になつかれている自覚はあったし、それを上司がもちろん把握していることも知っていた。仲良しでよかったなあ、などと言われるからには、うまくやれと指示されているも同然であった。かくして俺は、かつて拐かしたまだやわらかい髪の子供の恋心を、不器用にももてあそぶことになり。手に触れて、口付けを交わした。海を渡った見知らぬ土地の吹き荒ぶ寒さに身を寄せ合った。さらにその次を望んだのは彼だった。樺太を共にした元英雄に、隙を見せて深々と傷をつけられたあの日は数日前のことだった。
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