幾千の青が初恋を謳う「今日は、どっち?」
君は困ったように笑った。
その言葉から、表情から、佇まいから透けた優しさが大好きだった。
それでも、必要とされていないから。
同じ顔で笑った。
その影が、雨の音に濡れていた。
*
「おはよ」
「お、おはようございます!」
「あは、今日は光ノだ」
にこやかに笑った彼は颯爽と駆けていった。
その柔らかくしなやかな背中に惚けていると、後ろから続々と登校してくるクラスメイトたちにどんと押され、慌てて端に避ける。
僕の名前は、光ノシュウ。
挨拶をくれた、僕の想い人である彼の名はミスタ。
そして、もうひとり。
『平気?』
心のどこかで、軽やかな笑い声とともに優しい心配が聴こえた。
「平気ですよ。ご心配ありがとうございます」
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