久しぶり。そう声が出た。
「あぁごめん、覚えているはずがないか。大学のときに同じコマの講義を受けていたから覚えていて。」
数年前と変わらない小柄な体と、ふわふわした赤髪。その人は柏崎由良に違いなかった。
「私は芝真。覚えてなんていないだろうからね、以後よろしく。」
混乱しているのだろうか、彼は小さく口を開いたまま何も言わない。にしてもそんなに驚かなくてもいいだろう、いや、人違いか?と私が思い始めたころ、やっと由良は自分の唇の端を中指で軽く撫で、目を丸くする。
「覚えてるに決まってるじゃないか!今や天文学の権威の君を忘れるなんて!」
「おや、そうかい?」
「27にして人類が抱えてきた天文についての疑問を次々解決する、新星だって言われてるでしょ?あれだけ広まってるのに、知らないの?」
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