八月、蒸れた部屋の中、キュルキュルと回る扇風機が気持ちばかり涼しさをもたらしている。だが、それでは到底この不快感を拭えなかった。
「あづぅー」
コウは部屋主の好意に甘えて、扇風機の前を陣取っていた。当の主……カイは、扇風機に張り付くコウの背後で、コンビニのロゴが印字された安っぽいうちわを仰いでいる。
「今日は良い天気だからな〜」
カンカンと照る窓の外にちらりと目をやったカイは、四つん這いで扇風機の横に移動すると、うちわをコウに向けて揺らし始めた。
「ありがと……」
気持ちは嬉しいが、体は今にもどろりと溶け出しそうだ。張り付く服が余計に暑さを感じさせている。
「あのさあ……」
力が抜け、ぺしょりと床に伏したコウが、カイを見上げた。間延びした相づちが返る。
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