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    Musicaux_

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    Musicaux_

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    拉致されたので殺して遺棄したっていう話です 色々注意

    契約組で死体遺棄する話「グッ、ウッ」

    彗は目覚めた途端片目を瞑った。
    脳幹に鋭い痛みが襲ったのである。頭を抑えようとして腕が縄で縛られているのが分かった。
    しかしそんなことに驚いている場合ではないほど頭が痛く、彗は右側の頭を両手で覆って痛みをやり過ごした。
    血液が手に付着した。見れば固まりかけた血が手に付いていて、一気に気分が悪くなった。
    やっと周りを見渡す。
    見れば山の中であった。土がシャツにへばり付いていた。

    ムワッと草の香りがして荒い息を吐く。痛みを追い払おうと眉間にシワを寄せていた。

    「おい。そっちのはバラすぞ。アッチは目ェ送るからよ」
    「あ、はい。じゃあ目は潰せませんね」
    「あたりめーだろ。他はどうなってもいいけどよ」

    彗は目を閉じた。頭から流れた血が目に染みたのである。彗は暫く会話を聞いて、どうやら今から自分はバラされるらしいと分かった。細切れにして海に捨て、骨は焼くらしい。随分手間なことをする。焼却炉に突っ込んで生ゴミと一緒に捨ててしまえば良いのに。何ともまあ手際の悪いことで。
    雰囲気からして吸血鬼であることに間違いはない。自分は普段拘束具を持ち歩いていなければそもそも今は拘束されていてどうにもできない。八方塞がりの状態だ。

    彗は溜息をつく。どうやら自分は知らないうちに裏稼業らしき吸血鬼に目を付けられたらしい。殴って山に連れてきたのだろう。
    思い当たる節が多すぎて検討がつかない。理由くらい言ってくれてもいいだろうに。

    「、うゔ」

    隣から呻き声が聞こえた。彗は目を開いた。金髪の男は同じように縄で縛られていて、同じように頭を殴られたのか血が流れている。彼は覚醒したようだ。フッと目を開けた時、彗はその金髪が源晴方であることに気が付いた。

    晴方はボーッとしていたが、やがてビクッと体を跳ねさせて痛みに気付いた。どうしてこんな吸血鬼までもが連れさらわれたのか。一応同族だろうに。
    彗は寝そべったままペッと唾を吐いた。血と土が混じっていて粘ついていた。多分頬の骨が折れているのか違和感がある。

    「………す。彗」

    晴方が口を開いた。
    目を大きく開いたかと思えば、しかし痛みに顔を歪めた。晴方は自分だけが連れさらわれたのかと思ったが、状況を見て彗も誰かに連れさらわれたのだと分かったようだ。

    「なにが、あったんだ」
    「……シッ、静かにしてください」

    晴方はフーフー息を吐いたり吸ったりして黙った。離れた場所から聞こえる男たちの会話を聞いているのだ。

    「つか眼球送るってなんスか?どこに送るんすか?」
    「え。アイツの父親のとこだよ。あの家の人間特有の青の目を送り付けりゃさすがに金吐き出すだろ。あとあの嫁子供は別嬪だから売りゃ金になんだ」
    「うわあ。かわいそっすね。親父さん何したんすか」
    「そんなん俺のしったこっちゃねえな。俺だって人殺したかねぇわ。最近子供生まれたばっかなんだよ」
    「え。おめでたじゃないですか」
    「あぁ、思い出したわ。あのガキの親父さんが会長助けたんだとよ。ほら、× × × の件で」
    「ああ。あれそうなんすか」
    「で、金貰ったんだけどよ。△△さんが会長取るっつってんだ」
    「え!裏切るんすか!」
    「オウ。だからよ。会長が吐き出した金回収すんのよ」
    「え、」
    「お前も△△さんについてくよな?」
    「ヤ、急に言われても」
    「ついていかねぇの?」
    「えっ、」
    「あっそぉ」

    銃声が聞こえた。短いタァンという音だった。晴方は鋭く目を瞑ってから顔を上げた。部下らしき方の吸血鬼が死んだらしい。
    彗はおォと思った。吸血鬼も拳銃で死ぬのかと。それに金が入り用だとも。
    これは……

    晴方は目をゆっくり開けて、現状を整理するのに精一杯なようだった。どうしたら逃げられるか、そもそもあいつの家族も危ないんじゃないか……汗が頭皮から流れ出して、右ほほにジワーッと鳥肌を立てている。月明かりだけが届く森の中で、晴方の肌だけが光っていた。

    「彗。彗。よく聞け。俺が囮になる。だからお前が何とかして拘束を抜けろ。お前だけでも逃げるんだ。なんの因果か知らないが。アグ。痛。くそ。それで、お前はお前の家族を守ってやれ」

    晴方は苦しげに息を吐きながら一息に言った。彗は鬱陶しそうに眉をしかめた。
    彗は首を振り、ゴホ、と血が混じった咳をした。

    「いいえ、私がなんとかします。その代わり、あなたにも動いてもらいますが」

    彗は肩を回し、起き上がった。そして首を鳴らす。晴方は彗を見上げて得体の知れないものを感じた。
    この男、何があっても動揺しないなと思った。

    「この様子では術も使えないことでしょう。腕を頭の上まで上げて、腹まで振り下ろすのを続けてください。推進力でどうにでもなります」
    「えっ」
    「単純な構造のものは単純に解けます。圧力をかければ大体取れるでしょう。力点はここです」

    晴方は彗が喋り終わるより早く、息をヒュッと飲み込んだ。先程話していた吸血鬼がやってきたのである。背後からパキッと枝を踏む音が聞こえて、振り返るのも恐ろしい。少しでも身動ぎすればズドンと脳を撃たれて死ぬだろう。
    晴方は黙って吸血鬼の動向を伺った。彗に余計なことをするなと言いたかったが、声を出すのも厳しい状況だ。
    ドクドク心臓の音が鳴った。彗は言った通りに動いてくれるだろうか。それはわからない。

    「え。生きてたの?おい、ちゃんと始末しろよな」

    やってきた吸血鬼が、地面に転がった部下の死体を蹴った。晴方は彗を見上げた。向かい側に座っていた彗は、突然に恐怖に顔を染め上げた。

    「オー、アンタ強運だな。生きてるってスゲェよ」
    「な。なんっ。ウグッ。なんで、わた。私が。どなたでしょうか…」

    彗はみっともなく震える声で言った。
    晴方はあんまり驚いて固まった。
    彗の腕はガクガク震えて、冷や汗すらかいていた。

    「いやうるせぇから」
    「ゴボッ」

    吸血鬼が彗の顔を蹴り上げた。ゴギッと音がして、鼻から血が吹き上がった。彗は目をチカチカさせ、地面に倒れこんで荒く息を吐いた。

    「あのねぇ」

    吸血鬼が話しかけると、彗は背中をビクッとさせた。「は。はい」とひっくり返った声で彗は震え声で答えた。

    「お前さ、死ぬから。あんまり余計なことしない方いいよ。別に痛め付けて殺そうなんて思ってねぇから。わかる?だから黙っててくれりゃすぐ終わるの」
    「な。なんで、ゲホ。な、なぜでしょうか」
    「そりゃお前、親父がやらかした上に俺たちの会話を聞いただろ。人生は理不尽なんだよ」
    「ケホッ。ゆ。ゆるひ。許してください。私はただの学生です、今日のことは言いません、」
    「ふーん。学生さんなの。若いねぇ〜。学生証見せて」
    「え、あ、ジャ、ジャケットの中に」
    「あぁこれね」

    吸血鬼はカリカリ頭をかきながら制服のジャケットに手を突っ込み、学生証を見た。晴方はあまりのことにまばたきして、彗の顔を見上げていた。もう声すら出なかった。

    「え。スゲェ。山菊じゃん。退魔師なん?」
    「そうです。ゲホッ」
    「あそぉ。じゃあ尚更邪魔だねぇ」

    吸血鬼はピンと学生証を跳ねて言った。

    「お前、いいところの坊ちゃんだからさあ、実家にちょ〜っとばかしお金請求するけどいいよね?」
    「は。はい。助けて、助けてください」

    彗は頭を地面につけた。吸血鬼は何度か頷いて、彗の髪の毛を掴んで顔を上げさせた。

    「で。もう1つ条件あんだけ、ゴぇッ」

    彗は吸血鬼が近づいた途端、腕を振り上げて男の頭へ両手の拳を振り下ろした。バチンッと音がした。縄が切れたのである。
    吸血鬼がフラついたのを見て、腕を捻って拳銃を奪う。

    「テメっ、ガゥッ」

    吸血鬼が口を開いたので、顎を下から殴りつける。吸血鬼は思い切り舌を噛んで血を流した。口内の怪我は顔を殴るよりダメージがある。吸血鬼は口の中に火を突っ込まれたような痛みに地面へ崩れ落ち、目を回した。

    「人生とは理不尽……ですか」

    彗はドンッ、と吸血鬼の足を撃った。晴方は目を閉じた。瞳孔が狭まって、何が起こったのか理解できていなかった。
    吸血鬼の足から血が落ちて、男は呻いて倒れこむ。

    「さて。ええと……なんでしたっけ。ああそうだ。あなたがたの……ボスの名は?」
    「いぢっ。いでで、いーっ」

    吸血鬼は何を言われているのか分からないようだった。彗は仕方ないのでしゃがんで口の中に手を突っ込み、グラグラしていた歯をちぎった。
    犬が威嚇するみたいに、彗は右側だけ上唇をグイッと持ち上げた。犬歯が折れていた。

    「歯医者は苦手なのですが……」
    「えあ、やめろ。撃つな」
    「ええ、撃ちません。質問に答えていただけないでしょうか」
    「し。知らね。知らねぇよオッ」
    「まァ。根性があるのですね」

    胸ポケットからペンを出し、彗はしゃがみこんで吸血鬼の手にそれを突き刺した。ブチッ、と肉が抉れ血がドロドロ溢れる。
    男は悲鳴をあげるのも恐ろしくなり、キーッと喉の隙間から声を出した。

    「○○○!○○○!」
    「ありがとうございます。それから、どちらに向かえば街に出られるのでしょう」
    「あっち。あっちから、」
    「そうですか。わかりました」

    彗は吸血鬼の頭を撃った。
    その途端、場がシンと静まり返る。人が死ぬと空気がピンと張り詰めるのであった。嫌な沈黙と、エクスタシーを味わったような虚脱感がある。彗は再び肩を回し、地面に横たわったままの晴方を見下ろした。

    「人生は理不尽ですものね」
    「……」

    拳銃を見た。仕方ないという顔をしながら彗は仕方ないとでも言いたげな顔をして晴方の縄を外してやった。

    「す、彗。……どうするんだ」

    晴方は追いつけていないようだった。一体今何が起こったのかもわからない。混乱状態である。人が殺害されるところを見るのははじててなのだろう。未知の感覚に胸がだくついている。

    「はァ、これだから吸血鬼は。汚らしい身分の分際でなんて恥知らずなことでしょう。やはり吸血鬼が飛べるのは羽が生えているからではなく、頭が軽いからではないのですか?」

    「私の顔に傷が残ったらどうしてくれましょう。あ、もう死んでましたね。ふふ、代わりにあなたを八つ裂きにでもしてくれましょうか」

    2人は足を引きずりつつ、下山する。

    「どうするんだ。警察に行くのか」
    「行くわけないでしょう」
    「じゃあ、どうするんだ」
    「割って骨まで燃やした後に生ゴミに出します」
    「……」
    「あァ、そうだ。あなた、今日の服は捨てて新しく制服を買ってください。硝煙反応が出ますので」
    「……お前、初犯じゃないだろ」
    「そう見えますか」

    二人は山を降り、使われていなさそうな焼却炉を探した。

    「足が入りませんね」

    彗は焼却炉を覗き込んで言った。晴方は座り込んで、立てた膝に伸ばした腕を乗せて俯いた。唾を吐く。血が混じっていた。
    彼は足を切断し始めた。晴方は見ないように俯いて、砂利の上を歩く蟻を見つめていた。
    バシュッ。ゴジュッ。という音がして、血まみれになった彗が死体を突っ込んで焼く。

    「なんで……おえ。慣れてるんだ」
    「なにがでしょう」
    「死体の……処理」
    「吸血鬼を解体することに慈悲は必要なのですか?ここでトチったらあなたもお縄ですよ」

    晴方はキュッと片眉を顰めた。端正な顔にシワが寄った。胸が悪くなって、頬の内側を軽く噛んだ。切れ長の目が乾いていた。

    「罪悪感とか、ないのか」
    「さっきから減らず口ですこと。手伝う甲斐性もないのならば黙ってください」

    晴方は喉の辺りが熱くなった。
    何時間か外で待っていると、彗が焼却炉から灰やいろんな残骸を取り出して袋に詰めた。

    二人は山に帰り、袋の中身をその辺に捨てた。晴方の家に行き、彗は風呂に入って服を借りた。晴方は服から血を抜くために洗ってそれをゴミに出した。それからソファに座り、頭をさすりながらぼんやり俯いていた。

    「……大丈夫なのか?」
    「はい。何ともありません」
    「…………」
    「こんなこと、三日も経てば忘れるでしょう」

    彗は無くなった犬歯の部分を歯で舐めた。むき出しの歯茎が触れて血の味がした。

    「またこんなことになるなんて、無いよな?」
    「私に聞かないでください。そもそも私は自ら喧嘩を売りに行くタチではございませんので」

    晴方は彗の顔を見た。肝の座った顔だった。殺すことに慣れてしまうと人間はこんなにも顔つきが変わるのである。

    「今回のことはあの二人にもご内密で。秘密を知ってる人間は少ない方がいい」
    「お前、あまりムチャすんなよ」
    「はい?」

    あっけらかんとした顔で晴方を見つめる。自分の心配をされるなど微塵も思っていなかったんだろう。

    こんな男と冥土まで一緒だと思うと、頭が痛くなってくる。晴方はそう思いながら、明日はそういえばテストだったなとぼんやり考えていた。
    人生は理不尽で平等に進んでいく。二人はわかりきっていた。
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    menhir_k

    TRAININGムラアシュ(希望的観測)
    タイトル適当にあとで考えるわ 滴り流れ落ちる水に歪む窓の外の光景を眺めやりながら、己の判断にそっと安堵の息を吐いた。店を早くに締めたのは正解だった。この様子だと、雨は夜通し激しく降り続くだろう。夜の優れた聴覚が雷の声を拾い、ムラビトはそのまま一秒、二秒、三秒、と窓の外に視線を向けたままカウントを始める。六秒目を舌の端に乗せるより僅かに速く、外が昼間の明るさを取り戻した。雷はまだ遠い。
     雨のにおいがする。嗅覚に長けた魔物がムラビトにそう告げたのは、店の裏に積み上げられた道具の在庫をアッシュと確認している最中だった。まず、空を見上げた。天頂を少し過ぎた太陽が燦々と輝き目が眩む。それから、西の空を見やった。青空の下、緑の山々が常と変わらず連なっている。目を凝らすと山頂に雲がかかっているように見えなくもないが、それだけだ。最後に、ムラビトは並び立つアッシュを見上げた。同じように西の空を眺めていたらしいアッシュは、ムラビトの視線に気が付くと小首を傾げ、小さく肩を竦めて笑った。それでも魔物からのサインが気になったムラビトは、早めに店を閉めることにした。店の二階に居住スペースを構えるムラビトやマオと違い、店員であるアッシュは村外れの家に帰さなければいけない。午後の疎らな客足が途絶えた頃を見計らって本格的に店仕舞いを始める。売り上げの集計はマオに任せて、ムラビトはアッシュと一緒に外に干したままの洗濯を取り込みに行った。その頃には、西の空は重暗く厚い雲に覆われていた。アッシュを見送り小一時間程が経った頃、とうとう空が泣き出した。
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