ポッキーゲーム今日は11月11日。世間ではポッキーの日というらしい。シオンはたまたま貰ったポッキーを息子のレントと共に食べようと思っていた。
「今日はポッキーの日らしいよ」
「だからポッキー持ってたの?」
シオンはレントにポッキーを見せ、一緒に食べようとレントに言った。
2人で食べていると、シオンがふと思い出したかのように言った。
「レント、ポッキーゲームって知ってる?」
「まあ、一応知ってるけど…」
「誰かとした事ある?」
「逆にあると思う?」
「もしかしたらって思ったんだけどなぁ」
シオンはつまらなさそうにポッキーを食べる。
「……親父としたの?」
レントは少し不機嫌そうに言った。
シオンはレントが父親の事を話題に出すのは珍しいなと思った。
「クオードはそういうのするような人じゃなかったよ」
少し苦笑いしながら言う。レントは相変わらず不機嫌だった。
「……ふぅん。じゃあさ、」
レントはポッキーを咥え、シオンに突き出す。
「俺とする?」
シオンは驚き、レントとポッキーを交互に見た。
(え……レントと…?ポッキーゲーム……?)
実の息子とポッキーゲームをしていいものなのかシオンは不安になる。
「折った方が負け、なんでしょ?」
レントの眼差しは真剣だった。やがてしばらくして、シオンは恐る恐るレントが咥えている反対側を口に入れた。
(これは……想像以上に恥ずかしい……)
シオンは顔を赤らめる。
次第にお互いの顔が近づいていく。
(まずい、まずい…!このままじゃ…レントとキスしちゃう…!折らなきゃ)
そして唇が触れそうになった時、ポキッと小さい音を立ててポッキーが折れた。
折ったのはレントだった。
「……母さんの勝ちだね」
レントが意地悪な顔をして言った。
シオンは安堵の表情を浮かべる。危うく実の息子とキスをする所だった。
「俺はもういいから残りは母さんが食べなよ」
そう言ってレントはリビングから出て行ってしまった。
1人残されたシオンはぺたんと床に座り込むと、しばらく呆然としていた。「……レントのバカ……」
シオンは顔を真っ赤にして呟いた。
レントは自室に戻りながら、
(ちょっとからかいすぎたかな…)と、反省する。
(まあ、あのままキスしても良かったんだけど…さすがにそれは本気で母さんに怒られそうだし…)
レントは苦笑いした。
(母さんが俺のこと好きになってくれればいいのに……)
そう思いながら、レントはベッドに倒れ込んだ。