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    misaka_mh

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    フィガオエ。

    愛だの恋だの馬鹿らしい 燭台の上、ゆらゆらと揺れる蝋燭の火が部屋の中をぼんやりと照らしている。カーテンを閉めた部屋は薄暗く、曇り空を映したような瞳は熱を持たず冷ややかにオーエンを見上げていた。
     フィガロは何も言わない。最初に放った一言がすべてだった。無言の圧力に押しつぶされそうになる。ただでさえ息苦しくて呼吸は浅くなる。
     血が滲むほど強く唇を噛みしめてコートに手をかける。ゆっくり焦らすように脱いでいくのは最後の抵抗だ。
    「熱くて火傷しそう」
     実際には北の国の大気を思い出すような視線ではあるが、あえて揶揄うような言葉を選べば、フィガロの目は少し細められた。肌に冷気が纏わりつく。どうあっても振り払うことができないようなそれに、「分かったよ」と小さくこぼして観念した。
     さっさと服を脱いでいく。情緒なんてものはない。どちらもそんなものは望んでいない。さながら鳥が自ら羽根をもぎ皮を剥いで、どうぞ食べてくださいと身を差し出すようなものだ。
     食われるために動いている。酷く屈辱的でどうしようもない。
     一糸纏わぬ姿になったところで、フィガロは動じない。その奥に欲でも宿らないものかと思ったが、最後までそうはならなかった。厚い雲に覆われてその心を覗き見ることはできない。仮に彼の内心を詳らかにしたところで、何もありはしないのだろうけれど。
     椅子に座るフィガロにしなだれかかる。その耳元に頬を寄せて「せんせい」と囁きかけた。嫌がらせだ。けれどフィガロは喉の奥を鳴らした。
     フィガロは訝しむオーエンの顎を掴んで視線を合わせると、濁った瞳がまっすぐでオーエンを見ていた。
    「萎えるからやめてくれる?」
    「嘘つき。兆してもいないくせに」
     膝でフィガロのものをぐりぐりと刺激してみる。外的な刺激に自然とそれは反応を見せたが生理現象の域を出ない。時折、フィガロは自分の感情だけではなく生理現象まで魔法で制御しているのではないかと思う時がある。南の国の医者を演じるのと同じくらい、自らを偽ることは彼にとって呼吸するのと同じなのかもしれない。
     それを「可哀そう」と表現したら、丁度虫の居所が悪かったらしいフィガロに殺された。正確には何度も死んで何度も生き返った。気が狂うほどの短い間隔で。
    「おまえの恋人はかわいそう」
     フィガロは何も言わなかった。笑うことも怒ることもしなかった。もしかしたらフィガロにとっては性欲処理さえ必要ないのかもしれないと思うと酷くつまらない気持ちになったから、さっさと終わらせてしまうべく噛みつくように唇を重ねた。
     辛うじて求めれば反応があるので、口付けは徐々に深くなって余計な考えは欲に沈んでいった。
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