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    misaka_mh

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    misaka_mh

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    ミス(α)オエ(α→Ω)の続き。

     ミスラの魔法により引き出されたヒートは、一昼夜で治まった。
     大量の書物を漁るより手っ取り早く情報を得たかったので、オーエンは夜間に双子の元を訪れた。絵の中に収められたスノウとホワイトは日中よりやや大人しい。

    「番について教えて」
    「あらあらオーエンちゃんったら」
    「タダで教えてもらえると思ってるの?」

     お互いの口元に手を当てて、小馬鹿にするように双子は言ってくる。オーエンは無言で絵を持ち上げてぐるぐると振り回した。きゃーという間の抜けた甲高い悲鳴が響き、やがて途切れた。絵の中でくるくる目を回している双子を何度か揺さぶると、二人は口々に文句を言った。

    「何するんじゃ、オーエン!」
    「人に物を頼む時の態度じゃなくない!?」
    「うるさいな。さっさと教えろよ」
    「もー」
    「仕方ないなー」

     オーエンの嫌がらせなど大して効果はなかったろうに、スノウとホワイトはさも被害者ですという顔をしながら口を開いた。

    「番というのは、αとΩの特別な繋がりじゃ。結婚と似たようなものじゃな」
    「番関係を約束の一種と捉えるかは本人たち次第じゃ。まぁ、番関係を破棄する者も少ないからのう」
    「破棄できるの?」
    「出来る。αの方から一方的に」
    「故に、Ωの心にストレスがかかり、心身に支障をきたすこともある」

     最悪だ、とオーエンは心の中でつぶやいた。ミスラの戯れによって生じた関係を、自分の手で終わらせることができない。どこまでいってもΩはαに支配される存在なのか。
     不快感が顔に出ていたのか、「まぁ慌てるでない」とスノウが慰めるように続ける。

    「Ωにとってメリットもある。Ωの放つフェロモンは、番のαにしか効果がなくなるのじゃ。その分、効果も大きくなるが」
    「その特性から、αは番のΩに対して独占欲或いは執着を抱く。これはΩも同じらしいがのう」
    「つまりミスラは僕のものってこと?」

     一方的に搾取されるだけの関係ではないというのなら、いくらか溜飲も下がるというものだ。期待を込めて双子の絵を見ると、彼らは顔を見合わせた後、オーエンに視線を向け「そだねー」と言った。悪い気はしなかった。

    「Ωから番は破棄できないの? 絶対に?」
    「らしいよー」
    「僕の身体がαに戻ったら?」
    「自動的に破棄されるんじゃない? αとαは番えないからね」
    「それができたら我らとっくに番になってたもんねー」

     今度は満面の笑みでお互いの顔を見つめ合う二人に辟易した。だが、同時に彼らへの用も終わったので、絵をポイと放り投げた。わざとらしい悲鳴を上げて双子の絵は飛んでいった。
     身体が元に戻る方法を探すことが第一ではあるが、ミスラと番になったおかげでフェロモンが他のαに効かなくなったため、最悪の状況は脱したはずだ。

    「オーエンちゃん」

     部屋から出ようとしたオーエンの背に、もごもごとした声が二つかけられた。視線をやれば、ベッドの上に裏向きで双子の絵が落ちている。声がくぐもっているのはそれが原因であるらしい。

    「番が出来てよかったね」

     二つの声が告げた同じ祝福の言葉に、上向き始めていた気分が急降下した。恐らく彼らを雑に扱ったことに対するささやかな報復なのだろう。いっそ燃やしてやろうかとも思う。しかし、夜にオズが役立たずになっているとはいえ、フィガロに出張られては面倒だ。苛立ちのまま舌打ちし、「いいわけないだろ」と吐き捨てた。
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