そして――
ミスラという番を得てから、幾度かヒートを経験した。
ヒートになったΩが発するαを誘惑するフェロモンも、スノウとホワイトが言う通り番であるミスラにしか効果がないことも確認できた。その分、ミスラには効果がありすぎることも。
変わらずオーエンは自身のバース性を偽る魔法を用いていたが、ヒートになるとこれも乱れるのか、狙いすましたかのようにミスラが現れる。ミスラが言うには「甘い匂いがしたので」らしいから、実際狙ってきているのだろう。その後に起きたことは思い出したくもない。だが、ヒートの熱もミスラを相手すると治まるのも確かなので、困ったものだ。
周期を考えるとそろそろヒートが来るという日に、ミスラは双子と賢者の四人で北の国へ赴いていた。元々は北の魔法使いを指名しての依頼だったそうだが、ブラッドリーと協力してミスラをその気にさせてすべて押し付けた。オーエンとしても、ヒート中に団体行動など御免被るし、ミスラを遠ざけたかったのもあった。まさに一石二鳥だった。
2832