四月馬鹿「兄ちゃん兄ちゃんっ。今日の晩ごはんカレーなんだって!」
「?カレーって、今日は昨日の残りを消化する筈じゃあ」
「あ、信じた?ざんねーんエイプリルフールでしたー!」
「エイプリル、ああ4月馬鹿ですか」
「しがつ?」
「日本におけるエイプリルフールの言い回しだよ。にしても、去年のこの時期は嘘なんてついていなかったじゃ無いか。一体どういう風の吹き回しだい?」
「えっと、サッカークラブのセンパイから教えて貰って……」
「なるほどねえ。それでこんな馬鹿げた事を」
「兄ちゃんはエイプリルフールのこと知ってたの?」
「知ってるも何も、この時期になるとニュースでも取り上げられるからね。それで?その先輩とやらに一体何を吹き込まれたのさ」
「あのね、今日はウソをついても良い日で、みんなでウソを楽しむ日なんだって!」
「それだけかい?我が弟ながら随分と浅い知識を衒らかすものだねえ」
「うっ、じゃあ兄ちゃんは何を知ってるのさ」
「おや、この僕に講釈を垂れろとでも?いいでしょう。この僕が教えてあげようじゃ無いか。
まず、エイプリルフールの起源は明らかにされておらず、十五〜六世紀の西洋諸国とも三世紀頃のインドとも言われている。日本に広まったのは大正時代と言われ新聞にもその記事が……」
「???」
「って、この辺りは一斗には難しいか。お前が気になっているであろうエイプリルフールそのものの話をしようか。
エイプリルフールは一斗の言う通り嘘をついても良い日とされていて、イギリスでは午前中に嘘をつき、午後にはネタバラシというルールが定められているね。日本でもそのルールを適用している人が多いそうだ」
「えっ、そうなの?」
「ああ。とはいえこのルールを採用していない国も多いみたいだけどね。それと、近年では『エイプリルフールについた嘘は1年間叶わなくなる』といった情報が回っている様だけど、これはどこかの誰かが言った伝統もルールも何も無いただの嘘だね」
「へえー」
「そもそも、嘘をついても良い日だとか何とか言って訳もなくはしゃぐというのは随分と馬鹿げた行動だと僕は思うね」
「に、兄ちゃん?」
「メディアやら有名人やら、面白みのかけらもない嘘を無闇矢鱈にばら撒いて、今日だけは許してと言うのは随分と変な話ですよ。国によっては国営メディアで嘘のニュースを流すだとか。全く、訳のわからないイベントに意味もなくはしゃぐ馬鹿どもが大勢いると思うと、ゾッとする話だね」
「…………」
「一斗?何だい黙り込んじゃって」
「……ぅう〜っ!そんなに言わなくたって良いじゃんか〜〜〜!」
「ぇ、はっ!?何でお前が泣くのさ!?」
「エイプリルフールではしゃぐのはバカって言った〜!」
「いやっ、何も一斗のことを言った訳じゃ……!ああっもう!泣き止めってばー」
▽
(なんてこともあったなあ。小学生の頃の兄貴、かなり偏ったものの見方してたけど、あの時は本当にキツかった。……それにしても)
「うわーっ!今年もディスティニーGOから謎のアプリがリリースされてる!ミリタリーマスターは1日限りのミニゲームが実装されていますし、アニメ会社からもエイプリルフールに纏わるネタ画像が多数投稿!ふ、ふふふふ。久々に本気を出すとしましょうか……。この僕が、絶対に、エイプリルフール限定イベントを全て楽しみ尽くして見せます!!!」
「…………」
(いや思想変わりすぎじゃない?何もあの頃の発言を翻すな何て事は言うつもりはないけどさ。それにしたって変わりすぎだろ。誰よりも浮かれてるじゃん。誰よりも楽しんでるじゃん。謎に僕に圧かけてきたの何だったんだよ)
「……ねえ兄貴」
「何ですか一斗」
「僕の知り合いにさ、エイプリルフールにはしゃぐのは馬鹿のすることだって言う奴がいるんだよね。どう思う?」
「へえ、随分と偏った思想を持った奴もいるもんだね」
「………………」
「兄貴ってさあ、本っっっ当に人生楽しんでるよね」
「おや、随分と今更なことを言うじゃないか。僕は一分一秒も無駄にせず、効率よく且つ真剣にコンテンツに向き合っており__」
「ぁあーもうっ、うるさい黙って」
「何で!?」