大切な友よ秋葉名戸学園を卒業して早数年。ラノベ作家として日々活動している野部流来人は、現在東京から少し離れた地方都市にて生活をしていた。自身の作品に登場する土地のイメージに近い場所を探し出し、其処で執筆活動を行う。かつての仲間達からはそんな頻繁に引っ越していては大変じゃないのかと気をかけさせてしまってはいるが、この生活は野部流に確かな刺激をもたらしていた。そんな一風変わった日々を過ごしていた最中、出版社との仕事の兼ね合いで久し振りに稲妻町の近くまで行くこととなった。
その時浮かんだのが長らく創作活動を共にした戦友、漫画萌の顔であった。萌とはシルキーナナが完結したのを機に長らく共同での仕事はしていないが、彼らが手掛けているゲーム制作のシナリオ編集を手伝う等という形で今でも交流は続いている。とはいえそれは電子メールやネット通話を介したやり取りであり、最後に直接顔を合わせて話したのはもう何年も前の話だ。
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