アズライトが滲む***************
「というわけだ。スケッチをしている間は、周囲を見ていてくれないだろうか」
「…………」
「頼んだぞ」
こちらが唖然としているのにも気に留めず、喜多川は持参したそれにさらさらと鉛筆を走らせ始めた。おい、承諾した覚えはないぞ。
しかしそんな悪態をつくのもなんだか面倒で、明智は深いため息をつきながら一応は武器を構えた。ここで無防備な彼を置いて帰ってもいいのかもしれないが、戦力として数に加えるようになった以上は、失うわけにはいかない。これは合理的判断だ──そう自分に言い聞かせる。
「フフ……素晴らしい……!やはりこの世界は着想の宝庫だ……この禍々しい曲線美……!」
……やはり帰ってもいいだろうか。
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