お話しヒムくん(仮) あるところに銀色の大きな男の子がいました。
彼の名前はヒムくん。人間ではありませんが、人間の女の子のメルルちゃんとお付き合いをしています。
人間ではないヒムくんは、どうしたらメルルちゃんともっと仲良くなれるのか、いつも一生懸命考えていました。
ある日ヒムくんは、友達のポップくんとマァムちゃんに会いました。二人は仲良くお付き合いをしています。
(そうだ、この二人を参考にしたら良いにちがいない!)
ヒムくんは早速二人を観察することにしました。
ポップくんとマァムちゃんは、しばらくの間笑いながら楽しくヒムくんとお話しをしました。
すると、急にポップくんがマァムちゃんにいじわるなことを言い出したのです。
「おめー、少し太ったんじゃねーの?」
マァムちゃんは怒って、ポップくんを地面にめり込むくらいの力で叩きました。
いじわるを言ったのはポップくんの方なのに、ポップくんは腹を立ててマァムちゃんに文句を言いました。
そしてそのまま言い合いの喧嘩になり、お互いプイと違う方を向いてしまいました。
しかし一呼吸おくと「そういえばね」と、何事もなかったようにマァムちゃんが話し出し、ポップくんも何事もなかったように話に応じ、再び仲良くお話しを始めたのです。
二人のやりとりはヒムくんには少し難しく、よく分かりませんでしたが、仲の良い人間の男女はこういうやりとりをするものなんだなと思いました。
次の日、ヒムくんはメルルちゃんに会いました。メルルちゃんはいつもどおりニコニコしています。ヒムくんに会えたことがとても嬉しいようです。
ヒムくんは他愛のない話を少しした後、昨日のポップくんの真似をしてみました。
「なあメルル、おまえさん少し太ったんじゃねーか?」
ヒムくんは、メルルちゃんがどんな反応をするのか、ワクワクしながら様子を見ました。しかしメルルちゃんはマァムちゃんのように怒ったりはせず、笑顔のまま固まっていました。
(おかしいぞ?何か間違えたか?)
そう思ったヒムくんは、昨日ポップくんがマァムちゃんに言った言葉を、次々と投げかけてみました。たくさん言えば、どれかしら正解するのではないかと思ったからです。
しかし、どんな言葉を投げかけてみても、メルルちゃんは笑顔で黙ったまま俯いています。
よく見ると、肩が震えて目に涙が溜まっているではありませんか。
(しまった!酷い言葉を言いすぎた!)
そう思ったヒムくんは、メルルちゃんに「酷い言葉をたくさん言ってすまねえ」と謝りました。
しかしメルルちゃんは「違うんです…違うんです…少し、思い出してしまって…」とだけ言うと、それ以上何も言ってはくれませんでした。
そしてメルルちゃんは一つ深呼吸をすると「そういえば…」と、何事もなかったように、話し出しました。
(人間てぇのは難しいな。でも、これからもずっと一緒にいたら、オレにも泣いてる理由が分かるようになるかもしれねぇな)
ヒムくんは、もっとたくさんいろんな話をメルルちゃんとしたいなと思いました。
おしまい