「それで、他に後悔はないの？」

「あ？」

「喜久福、もう食べられないよ」

「あの世にねーだろ」

「井上和香にも、もう会えないね」

「…今はちげーよ」

「へぇ、違うんだ
　誰かな、私が知ってる人かな」

「さぁな」

にやにやしやがって、分かって聞いてるな

「生徒の前で負けちゃったね、最強なのに」

「それは、良いわけじゃねーけど」

「勝つって言ってましたよね
　負けちゃいましたけど」

「だから、それは」

「夏油さんも七海も、言い過ぎですよ
　五条さんだって、負けたくて負けたわけじゃないんですから
　単に実力不足で」

「負け負け言うな
　あと灰原なんかムカつく」

「教師はつまらなかったかい？」

「柄じゃない
　けど、悪くなかったかな」

「なら、悟は行き先変更だな」

「は？何？何で？俺だけ地獄行きとか？」

「地獄、確かにそうかもしれませんね」

「残される気持ちは、君も知ってるだろ？
　人外の強さがあったとしても、変わらない」

「あなたが教師に向いてないなんて、
　みんな知ってますよ」

「僕は教師やってる五条さんも良いと思いますよ！」

「俺達最強、だろ、悟
　全員で、成りなよ」

「あなたが来ると騒がしいんで、暫く来ないで下さいよ」

「五条さん！また何十年後かに！お元気で！」

「ちょっと待て！」

「大丈夫、1人じゃないよ」

みんなに背中を叩かれて
北へ向かう飛行機には、誰も居ない
意味がわからん
あの世でどうしろと
マジで地獄行きか？
つーか散々人の未練を突きやがって

1人もんもんと考える頭に、微かに過ぎる声
本当はずっと前から聞こえていた
到着が近づくにつれ、次第にはっきりする声の主
知ってるよ、1人じゃないって
僕の姿は、今、五条先生だ

「やっほー歌姫」

「遅い！さっさと帰るわよ！」

＊＊＊

「硝子と乙骨君が頑張ってる
　つーか帰ったら、硝子に謝りなさいよね
　あんた達2人の始末、硝子にさせる気？
　伏黒君のお父さんの事まで
　硝子1人にどんだけ背負わせる気よ
　ほんと自己中で責任感ないわね」

説教を聞きながら
腕を引かれ、僕は歩く
僕より弱いけど、力強く、彼女は進む

「うん、ごめん」

「アンタが素直に謝るとか、キモい」

「僕はいつでも素直なGLGだよ」

地獄か、確かに
この世はうまくいかないし辛い事が多い
それでも、合間に見える光が
向こうにないものが
僕は嫌いじゃない

「何笑っての気色悪」

「歌姫は変わらないなぁと思って」

「何それ？バカにしてる？」

「被害妄想は良くないよ」　

「アンタのせいなんだけど！」

こちらの線引きなどお構いなしに

僕に触れる君のままで

「そのままの歌姫がいいよ」

「アンタはもう少し素直になりなさいよ」

失いたくないな

ならば勝つしかない

地獄の第二ラウンドの幕開け