惚れたが鯉登音之進は悩んでいた。
悩んでいると言っても、何も辛いとか悲しいとかそこまで大事なことでもないが、経験の浅い若輩者としてはそれなりに頭を悩ませているのである。
きっかけは、先日行われた飲み会で出た話題だった。
親睦を深めるという名目で、同じ連隊の若手尉官達がこぞって集まり飲んでいたのだが、そこでとある少尉の話題が出た。
別隊の男なのだが、どうやら其奴がとある女郎に入れ揚げ、曰く『寝ても覚めても』という状態になってしまったらしい。
「そんなに良い女だったのか?」
「いや、よくある女郎の手口だよ。名前を呼んで、そっと身体の何処かに触れてくる」
「甘く耳元で囁いて、次の約束を強請り、最後に『待ってます』ときたもんだ」
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