「おうとがわさん、おつかれ?」
一護は後ろからぎゅうぎゅうと抱き締められている為顔が見えない儘の男に向かって声を掛ける。
行き成りだったが視界の端に映る黒と蒼緑色の混ざる特徴的な長い髪で自身を抱いているのが王途川だという事が分かった。
王途川は朝から何処かへ出かけていた筈だ。
連れてってくれ頼み込んだにも関わらず置いてけぼりにされたのでふてくされながら置いていった編み笠に爪を立てて憂さ晴らしをし、飽きたので縁側でぷうぷうと昼寝をしていたのだ。
気持ち良く寝ていたのを起こされたと思ったらこれだ。
おうとがわさんはわがままだ、と何時もは王途川に思われている事を唇を尖らせてぶちぶち文句を言いながら小さな手を伸ばして王途川の頬にぺちりと当てる。
首を上に向けても王途川の顔は見えず、髪がカーテンの様に掛かって落ちている。
すう、と王途川の吐息が一護のねこの耳に当たって反射的にぴるぴると震わせた。
くすぐったい、と一護が笑う。
「おつかれさま、おうとがわさん」