ようこそ、月嶋珈琲店 月嶋のおじさんは、喫茶店のマスターだ。強面で、どことなく陰のある男性。過去のことは時々教えてくれるが、いつもごまかされる。体型が崩れていないから、年齢がわからないけど、多分年上なんだろう。年上だと思って話しかけている。
私がカウンターでクリームソーダのストローを噛みながら、おじさんを眺めている間も、彼は黙って新聞を読んでいる。時々私の視線に気づくと、メガネのフレームから上目遣いでこっちを見て、ほほえんでくれる。
「どうかしたの? 静ちゃん」
なんて、優しげに尋ねられれば、私なんかは机につっぷして、お腹の底から泣き言とわがままをぶちまけてしまう。スーパーの床でウィンドミルめいた動きでお菓子をねだるキッズのようだ。
1978