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    sio6_sio

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    スカ監です。(ツイステ。スカリーと監督生)ゲロ長い漫画の後半部分が完成する気しなかったので、とりあえずプロットを小説ぽく整えました。

    つづき「寂しい」
    大きな背丈からは想像がつかぬほど小さく縮こまり、白髪の青年が同じ布団の中でうずくまっている。
    私のベッドではなかったか。ここは。いいや、間違いなく自分のものだ。
    しかし、聞こえてきたすすり泣く音と、静かな呟きが監督生の思考をすぐにかき消す。
    「我輩も誰かと、喜びを分かち合いたい」「幸せを分かち合いたい」「楽しさを、一緒に」
    青年はあまりにも痛々しく、弱々しい姿で本心を吐露していた。監督生の声は聞こえず、当然姿も見えていないのだから、本来は誰にも見せることのない、胸の内なのだろう。
    数日の間とはいえ、監督生はこの青年が幾度となく泣き、その度に立ち直り、走り回る姿を見守った。ただ、ここまで弱く、小さく感じられたことはない。何も知らないはずなのに、監督生の心にも痛みが走って、締め付けられる思いがした。
    思わず、手を伸ばした。そこにはなんの感触もなく、監督生の手は青年の身体を突き抜ける。それでも青年の背中を貫く腕を曲げ、そこにあるかもしれない存在を抱きしめる。
    「きっとあなたには見えないし、聞こえないけど」「私が見てるよ」
    青年は何の反応も示さない。
    「だから、もっと笑って」「あなたの楽しいことを教えて」「あなたの好きなことを教えて…」「私にあなたが見える限り、一緒にいるから」
    ややあって、青年は頭まで被っていた布団を離し、上半身を起こした。
    そうして自身の右手を見つめ、ゆっくり開き、握りしめ、また開く。そして勢いよく握った。
    「…いいえ。我輩にはジャック様がいる。寂しいはずもございません!貴方様1人が、そしてハロウィンが、我輩の心にあれば十分なのです!」
    「誰かに…わかってもらう必要なんかない…ないんだ…」
    右手を握りしめ、自分に言い聞かせるように、決意を固めるように。監督生の存在は、やはり青年にはわからない。

    やがてハロウィンが間近に迫って、窓の外にも装飾が増えていく。それを眺めているのかいないのか、青年は「ああ、いけない。あの中身のない空っぽどもが、また騒ぎ立てている。やつらはなにもわかっていない。もうすぐハロウィンだというのに」と憎そうな顔をして1人準備を進めていた。どこから持ってきたのか、かぼちゃを丁寧にくり抜いたランタンや、箱いっぱいの黒い布が出来上がりつつある。
    「やはりハロウィンはこうでなくては。静寂で、素朴で、清貧な。」
    そうしてにっこりと、片方の口角をぐいとあげて笑う。最近、この青年はあまり泣かなくなった。
    監督生は物悲しさも覚えていたが、自分は青年に干渉できない。見守ることしかできなかった。当初こそ監督生が何もない場所を見つめたり、1人でしかめ面をしているのを指摘していたグリムだったが、やがてこちらも何も言わなくなった。

    もうハロウィンが3日前に迫っている。相変わらず青年はドタバタと忙しなく、しかし以前よりも妙に落ち着いた振る舞いで、ハロウィンの準備に勤しんでいた。
    「ああ!あれが足りない。麓の街まで買いに行かなくてはなりませんね」
    突然立ち上がって、それだけ言うと、サッとドアから外へ出て行こうとする。
    「待って、わた…僕も行く」
    声が届かないことなどわかっているが、監督生は青年に話しかけるようになっていた。今日の授業や、生活の中で面白かったことを話す。相槌もないが、青年は時折大きな独り言を発するため、奇跡的に会話のようになることもある。
    何となく嫌な予感がしたのだ。今目を離すと、よくない。呼び止めて、もちろん聞こえないので意味はないのだが、追いかけようとしたところ、目の前でバタンと扉が閉められてしまった。

    そうして、青年は丸二日間、帰ってこなかった。結局、ドアを閉めた後の青年の足取りはわからず、監督生は膝を抱えて、彼の帰りを待つ他なくなった。増えていく窓の外の装飾を眺め、ふと青年が用意していたハロウィンの装飾を、飾りつけようと思い立った。立ち上がり、周囲を見まわし、例の黒い布や、かぼちゃを探す。
    かぼちゃはともかく、黒一色の布を、どう飾り付けする予定だったのだろう。しかもあんな大量の…あれ?
    そこで準備していたものが1つもないことに気づく。箱いっぱいの…黒い布は?ランタンもない。果ては、準備に使用していたナイフや、縫い針といった道具も無くなっている。縫い糸の一本すら見つけられなかった。
    「グリム、黒い布…知らない?」
    話しかけた後で、監督生に構いきれなくなったグリムは、エースたちとハロウィンの街へ出てしまっていることに気づく。
    1人か。なんだか塞ぎ込むような気持ちになり、広間のソファに座ろうとした。そこでふと、壁にかかった1枚の肖像画が目に入った。そこまで大きくはない。埃のせいなのか、光の反射か、肖像画の顔が見えない。ソファの上に立ち、ごく薄く積もった埃を払った。肖像画の人物が、木のうろのような目が、ばちり、と合う。その瞬間、バタン!と大きな音を立ててドアが開いた。

    「さあ!今年のハロウィンはもう数時間しかないんだ!急がなければ!」
    「これからのハロウィンは。派手で、豪奢で、賑やかな。恐怖を、楽しさを、喜びを。全てを分かち合うハロウィンにしよう!」
    あまりにも晴々とした笑顔で戻ってきた青年に目を奪われる。
    「ヒ…」「ヒヒ…」
    「イーヒャッヒャッヒャッ!」
    元気に、少し下を向いて不敵に笑う顔には、黒くて大きな大きな、まんまるのサングラス。
    「あ」
    監督生は大きく目を見開いた。脳裏で記憶が瞬く。「あなたは」

    青年が顔を上げる。肖像画と同じ目が、サングラスの闇夜の中で、ランタンのように輝いている。
    「我輩の名は、スカリー・J・グレイブス!」

    「さあ、ハロウィーンを始めよう」
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