無題 ぼふ、と。突然自分の上に降ってきた重みでのろのろと目を開ける。部屋は既に電気を落としきっていて、夜中も夜中という時間だ。一体何が起こったのか、と上体を上げきれないまま斜め下に目線を落とすと、暗闇の中でも目立つ白っぽい髪が浮いて見えた。
「あお、―んぶ」
あおい、と呼ぼうとしたその時、自分の上に寝っ転がっていた葵が身動ぎをして、再び布団の上へと転がされた。成人済み男性が上に乗っかってくるのは、いくらなんでも重さ的にきついものがある。抵抗するのはやめて、四肢をぶらりと脱力させた。
そういえば、葵は今日撮影していたドラマのクランクアップがあると話していたような気がする。大人気で二クールも放送があるドラマも、もうそんな時期かとぼんやり思った。おおかた撮影後に共演者や監督に誘われて飲みに行ったのだろう。あの監督、酒豪って噂だからな―と、普段はこんな潰れ方をしないであろう真面目な幼馴染の髪を、指で梳いた。
1505